2006年01月23日

再振替仕訳とは何か(4)

伝統的な意味での期間損益計算は、「収支の損益への修正」という形をとって行われます。
その意味で今日の企業会計の枠組みを「発生主義会計」と呼ぶ場合もあります。
その全体としての発生主義会計の中でももっとも発生主義らしいといってもよいのが経過勘定項目の設定であり、経過勘定項目の設定が「狭義の発生主義」によるものといわれる所以でしょう。

別に会計を学んだ人ではなくても、その計算の意味は理解できるといってよいのではないでしょうか。
当期の費用というとやっかいかもしれませんが、「当期分の家賃はいくらか」という問いに置き換えれて、簡単な条件を提示すれば、簿記的な知識がなくても解答は可能でしょう。
いいかえれば、それほど経過勘定項目の設定は、合理的なのです。
その合理的である理由は、時間(期間)を基礎としている点にあるといえるかもしれません。

経過勘定項目の基礎知識について整理してきましたが、これからが本題です(前置き長いっちゅうの)。

それは、

「なぜ再振替仕訳は翌期首に行われるのか?」

です。

実務指針では、実は、再振替仕訳を行っていなかったりします(ほへっ)。

再振替仕訳は行わなければならないのでしょうか?
行わなくてもよいものなのでしょうか?
そして行わなければならないとするならば、そのタイミングは翌期首でなければいけないのでしょうか?
翌期首でなければいけないとするとそれは何故なのでしょうか?

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2006年01月22日

再振替仕訳とは何か(3)

再振替仕訳とは、「決算整理で行われた経過勘定項目設定時の翌期首における逆仕訳」を意味します。
「収支」と「損益」とでは決算整理を行う前の段階で違いがあります。
その「収支」を「損益」に修正するために決算段階で登場するのが、経過勘定項目です。
伝統的な期間損益計算は、基本的には、「収支」を「損益」に変換する形で行われていますが、実際の経過勘定項目は、もう少し狭い範囲のものです。
より具体的に経過勘定項目を規定しているのが企業会計原則の注解5になります。

企業会計原則の注解5におけるもっとも大きな前提が、「継続的な役務提供契約」に係るものである点です。
継続的な役務提供契約であるからこそ、経過勘定項目の設定時にも期間按分(通常の問題では、月数按分)が合理性を持ちます。
単発的な役務提供契約や資産の売買(契約)については、そもそも注解5の対象とはなりません。

今、支出取引に限定して、少し考えてみましょう。

○○○××× 現金預金×××

借方側(支出)のみで考えてみると、費用(ないしは資産)が生ずる可能性があるのは、資産の購入か、役務の提供でしょう(両者の混在も考えられます)。
注解5では、このうち役務の提供しか対象にしていないことになります。
また、役務の提供には、一回こっきりというものもあれば、継続的なものもあります。
注解5は、このうち継続的な役務の提供を対象としている訳です。

注解5ではもう一つの大きなキーワードがあります。
それが、「時の経過」という点です。
「時の経過」とともに次期以降の費用となるのが前払費用です。

このような意味での費用(収益)の認識基準は、時に「時間基準」と呼ばれることもあります。
最も発生主義らしい発生主義でもあり、「狭義の発生主義」と呼んでもよいでしょう。

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2006年01月21日

再振替仕訳とは何か(2)

「再振替仕訳」とは、「前期末に行われた経過勘定項目設定時の翌期首における逆仕訳」を意味します。
決算整理前の「帳簿記録 → 試算表」は基本的に支出や収入をもとに計上されています。
前期の決算段階で支出(収入)を費用(収益)に修正する過程で生ずる暫定的、経過的な項目が「経過勘定項目」といってよいでしょう。

このような収支(収入と支出)の損益(費用と収益)への修正全般を規定したのが、企業会計原則の「損益計算書原則一A」です。

このような「収支の損益への修正」のうち経過勘定項目のみを取り上げているのが企業会計原則の注解5です。
いま、前払費用の部分を掲げておきましょう。

「前払費用は、一定の契約に従い、継続して役務の提供を受ける場合、いまだ提供されていない役務に対し支払われた対価をいう。
従って、このような役務に対する対価は、時間の経過とともに次期以降の費用となるものであるから、これを当期の損益計算から除去するとともに貸借対照表の資産の部に計上しなければならない。
また、前払費用は、かかる役務提供契約以外の契約等による前払金とは区別しなければならない。」

なんだか、わかったような、わからないような規定です。
対象が「継続的な役務提供」に係ることが特徴といってよいでしょうか。
前提として、継続的な役務提供契約がある。
その前提で「支出」を「費用」に修正する段階(決算整理)で生ずる項目がこの「前払費用」という経過勘定項目であるといってよいでしょう。

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2006年01月20日

再振替仕訳とは何か(1)

「再振替仕訳」とは、前期末におこなわれた経過勘定項目(前払費用、未払費用、前受収益、未収収益)の設定時の翌期首における逆仕訳を意味します(企業会計原則「注解5参照」)。

簿記の手続上、この再振替仕訳は、当期首(設定時からすれば翌期首)に行われることとされています(以下では、記述の簡略化のために経過勘定項目のうち前払費用のみを対象とします)。
以下、借入金に対する利息の1年分(120)を前払、決算時は、3か月分(30)が前払いという例をもとに考えてみましょう。

(1)×1期
(支払時)支払利息120 現金預金120 ←1年分
(決算時)前払利息 30 支払利息 30 ←3月分
(損益計算書)支払利息90 ←9月分
(貸借対照表)前払利息30 ←3月分

(2)×2期
(翌期首)支払利息 30 前払利息 30
(支払時)支払利息120 現金預金120
(決算時)前払利息 30 支払利息 30
(損益計算書)支払利息120 ←1年分
(貸借対照表)前払利息 30 ←3月分

×2期の冒頭における仕訳、つまり、「前期末の経過勘定項目設定時の翌期における逆仕訳」が再振替仕訳ということになります。

この「再振替仕訳とは何か」では、再振替仕訳の行われる根拠、特に翌期首に行われるのはなぜかに注目してみていきたいと思います。

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2006年01月19日

続・手形割引の会計処理(10)

保証債務は、手形の遡及義務という偶発債務を時価であらわしたものです。
したがって、その偶発債務が消滅すれば、保証債務を計上しておく必要はありません。
遡及義務が消滅するケースには、手形の期日が到来し、代金の決済が無事に行われた場合があります。
この場合は、

(借)保証債務×××(貸)保証債務取崩益(収益)×××

という処理を行うことになります。

また、遡及義務を実際に履行しても、偶発債務は消滅します。
この場合にも上記の処理を行います。
もっとも履行の結果生じた債権(不渡手形)は、貸倒れの危険がかなり高く、保証債務として計上した金額(結果として取崩して収益とする金額)よりも大きな貸倒引当金を決算において個別設定することになるでしょう。

以上、長期にわたって、手形割引の会計処理についてみてきました。
手形割引の会計処理に関連して実際の税理士試験の過去問をご紹介して、長かった続・手形割引の会計処理を終わりにしたいと思います。
ぜひ、もう一度、手がけてみてください(いずれも「税理士試験 簿記論 講師日記へのリンクです)。

(1)平成9年度の第2問 問2 1 「上級問題集bR」

(2)平成9年度の第2問 問2 3 「上級問題集12」

同一年度の同一出題者による出題です。
(1)は、金融資産(売掛債権)、(2)は、金融負債(社債)、それぞれ具体的な事例の中で、消滅する場合と消滅しない場合の会計処理を問うものです。
出題者の意識の中には、もちろん、金融資産・負債の消滅の認識があったことになるでしょう。
手形割引の会計処理という具体的題材をもとに、金融資産の消滅の認識について思いを巡らせた後に手がけたときに、これらの問題に対する距離感がいくらかでも縮んでいるとすれば幸いです。

続・手形割引の会計処理(完)
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2006年01月18日

続・手形割引の会計処理(9)

金融商品会計基準では、金融資産の消滅の認識について、財務構成要素アプローチ(部分アプローチ)をとっています。
そのため、金融資産の一部が他者に移転した場合は、その一部が無くなって、何かが残った(あるいは、新たに発生した)という処理を行うことになります。

手形割引は、勘定科目でいえば、受取手形という手形債権の譲渡ですから、手形割引時に、貸方・受取手形という処理を行います。
ただ、手形には、遡及という独特の仕組みがあり、手形を他者に譲渡しても、一定の義務(遡及義務)が残ります。
この遡及義務を負債として認識したのが「保証債務」です。

「保証債務」の計上が、従来の偶発債務の備忘記録と大きく異なるのは、それが本来の簿記上の取引として記録されることでしょう。
この場合の保証債務は、時価で計上されます。
ただし、このような保証債務の時価による計上は、負債そのものの時価評価を目指したものではありません。
必ずしも、積極的に、負債を時価評価しようという訳ではない点には留意する必要があるでしょう。
金融資産の消滅の認識について、財務構成要素アプローチをとるために、いわば、やむを得ず生じたものなのです。
したがって、保証債務の金額を決算において、時価で評価し直すということもありません。

そもそも保証債務自体が取引の対象となる筈もなく、その評価は、困難でしょう。
その評価を行うのは、企業の信用情報を有する金融機関ではなく、手形割引を行う企業なのです。
現実的な手形割引は、金融機関が手形の不渡等の事態が生じた場合には、企業に手形を無条件で買い戻させるという条件をつけて行っています。
そもそも取引の対象となっているのは、もともとあった受取手形から保証債務部分を除いた安全な債権のみなのです。
結局は、従来的な貸倒引当金の設定方法に近似した形で、保証債務を評価するということになるのでしょう(実際の問題では、手形額面の何%という形で出題されることが多いようです)。

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2006年01月17日

続・手形割引の会計処理(8)

手形割引は、法的には、手形債権の譲渡です。
金融商品会計基準にそった会計処理は、受取手形を減らす処理ということになります。

ただ、全部が無くなった場合はいいのですが、ちとややこしいのが、一部(これもわかりにくいですが)が残る場合です。
全部が無くなったなら何も問題はありません。
金融資産(この場合は、受取手形)を減らして終わりです。
問題は一部が残る場合です。

このような場合の金融資産の消滅の認識については、「リスク・経済価値アプローチ」と「財務構成要素アプローチ」と呼ばれる考え方があります。
既に、言葉でやられてしまう感じですが、いわば、「全部アプローチ」と「部分アプローチ」の違いです。

リスク・経済価値アプローチは、いわば「全部」アプローチです。
金融資産の全部(ほとんど)が移転して初めて、金融資産の消滅の認識を行う考え方です。
これに対して財務構成要素アプローチは、「部分」アプローチです。
金融資産の全部が移転していなくても、部分移転をそのまま認めてしまおうという考え方です。

受取手形は、代金を受取る権利です。
ただ、これを他人に譲渡しても遡及義務という偶発債務が残ります。
手形を持ちつづけていれば、不渡等が生じても代金をもらえないだけで、偶発債務があった訳ではありませんので、「偶発債務が生ずる」といった方がいいかもしれません。
手形割引(譲渡)を行うことは、純粋な「金銭債権」を譲り渡し、「偶発債務」が残る(発生)することを意味する訳です。
この残った(発生した)偶発債務を時価で評価したもの、それが「保証債務」です。

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2006年01月16日

続・手形割引の会計処理(7)

この続・手形割引の会計処理では、保証債務に注目してみている訳ですが、従来の取扱いをみているうちにすでに(7)です。
恐ろしい事です(←って、あんたでしょ)。

手形割引に伴う偶発債務について、「保証債務」という勘定科目が登場した理由を知るには、金融商品会計基準における「金融資産の消滅の認識」について知っておく必要があります。
金融資産の消滅の認識というと、金融資産(受取手形も含みます)がなくなったのはいつかという話になります。
簿記的にいえば、貸方・金融資産という仕訳を行うのはいつなのか、です。

この点に関して、二つのことを考える必要があると思います。
一つが、純粋なタイミングの話です。
そしてこの場合に金融資産をバラバラに考える必要があるのかどうかです。

金融商品会計基準では、金融資産の発生の認識を契約時点で、その消滅の認識を契約上の権利の行使・喪失・移転、おおざっぱにいうと無くなった時点で行うこととされています。
商品や固定資産については、今まで同様、資産を引渡した時点で、無くなった(商品は売上ですが)という処理を行うのですが、金融資産については、これを契約上の権利が無くなった段階で行うこととされました。

我国での一般的な株式の取引では、契約(約定といいます)から数日後に株式の受渡しと、代金の決済が行われるのが一般的です。
今までは、受渡日に売買があったとされていたのが、約定時点で仕訳をきることになった訳です。
株式取引を行う人は、経験があるかもしれませんが、株式の買いを約定すれば、その間、株価がすごく値下がりしても、約定した高い値段で、その株式を手にいれなければなりません。
つまり、約定した段階で、その株式が値下がりして、損をするというリスクは負うことになる訳です。
金融商品会計基準における金融資産の発生・消滅の認識の基本的な考え方(契約時点での認識)は、一般的な投資家のリスクの認識に近いといってよいかもしれません。

このような契約、引渡しといった話とは別に、その資産をバラバラにして、一部を譲渡するようなケースで、果たして、その資産を譲渡したのは、いつかという問題です。
複合金融商品(新株予約権付社債等)を考えるとわかるかと思いますが、金融商品は、分けたり、くっつけたりということが、可能なのです。
金融資産をバラして、その一部を譲渡したときの考え方には、リスク・経済価値アプローチと財務構成要素アプローチという考え方があります(って、名前どうにかならないんでしょうか)。

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2006年01月15日

続・手形割引の会計処理(6)

手形には、遡及という仕組みがあり、手形割引(譲渡)を行っても、偶発債務は残ります。
この偶発債務について、従来は、対照勘定又は評価勘定による備忘記録が行われることとされていました。
ただし、従来的な枠組みの中でも、これを備忘記録ではなく、簿記上の取引として捉える場合があります。
それは、引当金の設定が行われる場合です。

企業会計原則の注解18では、「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積もることができる場合には、当期の費用又は損失として引当金に繰入れ」ることとされています。

要は、損する可能性が高い場合には、引当金を設定することになる訳です(って、随分省略形ですが)。
手形割引については、従来は、貸倒引当金の設定による対処が行われていたといってよいでしょう。

手形割引は、法的には、手形債権の譲渡でした。
もう少し詳しくいうと、一般的な手形割引は、不渡等の特別な事情が生じた場合の買戻しの条件が付いた譲渡(買戻条件付譲渡)といえます。
手形債権は、譲渡してなくなってしまう訳ですから、本来は、評価勘定としての貸倒引当金を設定するのはおかしいです。
これは譲渡してしまった受取手形以外に受取手形がない場合を想定するとよくわかるかと思います。
貸借対照表上も、受取手形0で、いわば、マイナスの受取手形である貸倒引当金が生ずることになってしまいます。

理論的には、例えば、手形買戻損失引当金というような偶発損失引当金を設定するのが正しいというべきだったのかもしれません。
このあたりにも、従来から手形割引に対する偶発債務の処理がやや怪しい兆候はあったといってよいのかもしれません。
簿記論や簿記検定の出題でも、貸倒引当金の設定について、割引手形を含む場合(実践的)とそうでない場合(理論的)があったのは、上記のような理由からといってよいでしょう。

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2006年01月13日

続・手形割引の会計処理(5)

偶発債務の対照勘定による備忘記録は、あくまでもメモ的な記録に過ぎません。
手形割引を行った場合の備忘記録としての対照勘定が、一般的な事業を行う会社で財務諸表に直接表示されることはないのです。

もっとも、手形割引高は、補足情報として財務諸表に注記されます。
しかし、すべての注記事項を主要簿の記録と必ず関係させなければならない訳ではないでしょう(相手方である金融機関では、対照勘定が財務諸表に直接表示されるようです。試験には、まるで関係ありませんが)。

偶発債務の備忘記録は、偶発債務の存在を主要簿の上でも明らかにするために行われます。
手形が無事に決済され、偶発債務が消滅した事を把握するには、手形の期日管理が不可欠です。
一般的にいっても、どの手形は、いつ期日が到来するのかをきちんと管理していなければ、資金繰の予定は立ちません。
最悪、自ら不渡を出してしまうなどということにもなりかねないのですから、期日管理が重要であることは間違いないでしょう。
手形の期日管理を行うには、補助簿(手形記入帳)の記録が不可欠です。
しかし、補助簿の記録でまた、十分ともいえるのではないでしょうか。
手形割引に関係する補助簿は受取手形記入帳ですが、企業は、そもそもこの補助簿で一般的な手形の期日管理を行っています。
その記録をわざわざ新たな勘定を設け、主要簿に行うことのメリットが、面倒というデメリットよりも大きいとは思えません。

もちろん、対照勘定という特殊な勘定については、簿記上の本来の記録とされる場合(金融機関等)もあるようですし、また、割賦販売等における対照勘定法の利用は、筋もとおっている訳ですから、対照勘定そのものがまるで不要だという訳ではありません。
しかし、手形割引時における対照勘定の利用は、実務上の煩雑さが目立つだけで、とりたてて役に立つものであるとは思えません。

今まで、手形割引時に評価勘定法と対照勘定法とが紹介されてきたのも、評価勘定や対照勘定という独特な勘定を手形割引という出来事に応じて紹介できるからといった簿記の学習上の配慮という位に考えた方がよいのかもしれません。

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posted by 講師 at 21:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 続・手形割引の会計処理 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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