2005年12月28日

正規の簿記の原則

正規の簿記の原則は、企業会計原則の一般原則の第二原則としてあげられています。
まずは、企業会計原則の規定をみておきましょう。

「企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」

この原則が、「正規の簿記の原則」と呼ばれています。
ただ、「正規の簿記の原則」と呼ばれる文章の中に「正規の簿記の原則」という言葉が入っている訳ですから、この文章そのものは「正規の簿記の原則」ではなくて、「正規の簿記の原則」の原則というべきなのかもしれません。

この文章は、多くの事を語っている訳ではありません。
むしろ、何をいいたいのかがはっきりとはわからないといってよいのではないでしょうか。
ただ、なぜ正確な会計帳簿を作成しなければならないのか?を考えると帳簿を作成した成果としての貸借対照表や損益計算書といった財務諸表を正しく作成するためといってもよいでしょう。
その意味で「正規の簿記の原則」は、「誘導法」による財務諸表の作成を要請しているといってよさそうです(「誘導法」とは、財務諸表を帳簿記録を基礎に作成する方法をいいます)。

それでは、ここにいう「正規の簿記」とは、何を意味するのでしょうか。
極めて精巧な仕組みを持つ複式簿記が正規の簿記に該当するとはいえそうです。
ただ、複式簿記だけではなく、単式簿記による記録でも正規の簿記と考えてよい場合もあるようです。

正規の簿記の原則にいう「正規の簿記」であるためには、

(1)網羅性 (2)秩序性 (3)立証性

の三要件が必要であるといわれます。

企業会計原則の文章に「すべての取引につき」とあるように、網羅性が正規の簿記の要件として必要ということは頷けます。
企業が何らかの活動(取引)を行った場合に、これは記録して、じゃあこれは記録しないというように、記録すべき取引を選ぶ(一部を記録しない)ことがあってはならないでしょう。
そのような記録が、経営者や経理担当者の単なる記憶や憶測によってなされても困ったものです。
その意味で、立証性(証憑準拠性、検証性などとも呼ばれます)も必要でしょう。

わかりにくいのが秩序性です。
一体、何をもって秩序があるといい得るのでしょうか。
複式簿記には、明確な意味での秩序性が存在します。
秩序をルール(きまり)という言葉に置き換えるとわかりやすいかもしれません。
簿記は、企業活動の帳簿記録であり、仕訳→総勘定元帳という順で記録が行われますが、複式簿記の成立に欠く事のできない帳簿(主要簿)の役割を考えることで、「複式簿記の」秩序性(ルール)はみえてきそうです。

主要簿には、仕訳帳と元帳があります。
仕訳帳は、取引を発生順(歴史順)に記録する帳簿です。
元帳は、仕訳帳の記録を勘定口座(つまりは、内容)ごとに移記する帳簿です。
つまり、(1)歴史的な記録であることと、(2)内容に応じた記録であることが複式簿記の秩序性とみてよいのではないでしょうか。

ただし、このように仕訳帳と元帳を備えていなくても、例えば特に固定設備も持たず、小規模事業者で収支をすべて現金によって行っているようなケースでは、現金出納帳の記録に債権債務(貸し借り)等の記録を加えた程度でも、必要にして十分な記録といえる場合もあるでしょう。
この場合には、上記のような意味での複式簿記の精密な秩序性には劣るでしょうが、正規の簿記の要件を満たすに十分な秩序性を有しているといってもよいのではないでしょうか。
posted by 講師 at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 一般原則 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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