2006年07月17日

動態論の資産概念(8)

会計は、歴史的にみると「静態論」→「動態論」→「新静態論」と推移してきたといってよいでしょう。
現在は、動態論から新静態論への移行期といってよいのかもしれません。
もっとも完全な新静態論と呼ぶべきような会計観が確立しているとはいえないようです。
また、仮にそのような体系があったとしても完全に移行してしまうのかどうかも現時点ではわからないというべきなのかもしれません。

静態論では、資産を売却価値のある財産と考え、静態論のもとでの貸借対照表は、売却価値のある財産の一覧表と考えられます。
これに対して、動態論は、動的貸借対照表論とも呼ばれ、貸借対照表の見方、いや、それは貸借対照表のみにとどまるものではなく、会計全般に対する一つの考え方を示したものです。
動態論では、損益計算を重視し、収支を損益に変換する過程で生ずる損益計算上の未解決項目が貸借対照表に収容されると考えます。

今までに登場した動態論の資産類型は、次の4つです。

(1)支払手段(現金=貨幣)
(2)支出未費用(棚卸資産、固定資産=費用性資産)
(3)収益未収入(売掛金、受取手形=貨幣性資産)
(4)支出未収入(貸付金=貨幣性資産)

このように動態論では、企業活動を資金(資本)の循環過程と捉え、その資本の循環過程における資産をその投下過程にある資産(費用性資産)と回収過程にある資産(貨幣性資産)とに区分し、費用性資産は、支出額を基礎に、貨幣性資産は、収入額を基礎に評価することとした訳です。

動態論の優れた点は、企業活動を資本の循環過程になぞらえ、みごとに描写しつつ、その金額の決定(評価)の基礎的な考え方を呈示している点にあるといってよいかもしれません。
動態論の素晴らしさは、今日においても色あせることはないでしょう。
しかし、現実として時代は、また、静態論(新静態論)へと動いています。
新静態論のもとでの新たな資産概念も模索されています。
新たな資産概念を見つめるには、もちろん動態論以外の視点が必要なのでしょう。
しかし、現在においても色あせることのない動態論の資産概念、いや、動態論そのものに思いを巡らすことが、新たな資産概念、そして新たな会計学の習得の前に与えられた必須の課題といってもよいのではないでしょうか。

動態論の資産概念(完)


posted by 講師 at 22:04| Comment(4) | TrackBack(0) | 動態論の資産概念 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
動態論のもとでの貸借対照表は、売却価値のある財産の一覧表と考えられます。

静態論の間違いでは??
Posted by マル at 2006年09月02日 12:23
ご指摘のとおりです。
訂正させていただきました。
ご指摘ありがとうございます。
Posted by 講師 at 2006年09月02日 23:35
最近、動態論と言われているものにはいくつかあるということで、混乱しています。
アドバイスをお願いいたします。

動態論における資産の定義と言われるものには、シュマーレンバッファに始まり費用動態論、現金動態論、資金動態論と其々あることを知りましたが、「投下資本の循環過程にあるもの」とういう定義は資金動態論によるものが一番近いようにおもうのですが、動態論全てに当てはまるものなのでしょうか?
シュマーレンバッファ自体は期間損益計算の未解決項目ということで「投下資本の循環過程にあるものと」とは言ってはいないのではないかと思いますが、意味的にはそのように取れますし???
Posted by S at 2007年08月01日 00:42
Sさん、はじめまして。

私は、研究者という訳ではありませんので、必ずしも動態論について熟知している訳ではありません。
この記事自体もシュマーレンバッハの名前は出していますが、むしろ彼以降の動態論の流れを国内の学者さんが書かれたものを私なりにまとめたという方が近いです。
資産概念の類型自体もシュマーレンバッハのものとは異なっています。

残念ながら動態論を総括して議論するだけの力量は私にはありません。
企業は当然のことながら資金(資本)を動かしていますので、一定の資本運動の見方は背後にはあるんだろうと思います。
これを収支(いわば対流のように)とらえるか、循環(いわば回転のように)とらえるかが大きな違いをもたらすと考えると循環というのは、確かにシュマーレンバッハの動態論のもとでの資本運動の見方とはちょっと違うのかもしれません。
Posted by 講師 at 2007年08月02日 22:33
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