そこでの貸借対照表は、損益計算を行う手段にすぎません。
動態論で想定されている損益計算は、収支を基礎にしており、収支を損益に変換する段階で生ずる未解決の項目が貸借対照表に収容されることになります。
前回、商品販売を例にとり、動態論における資産がどのように考えられているのかをみてきました。
(商品販売の場合)
現金(1)100→商品→(販売)→売掛金150→受取手形→現金(2)
このような資金の循環過程のうち、その投下過程にある資産(商品=支出未費用)を費用性資産といい、回収過程にある資産(売掛金・受取手形=収益未収入)が、貨幣性資産と呼ばれます。
当初に投下された資本(100)を超えて回収された資本(150−100=50)が「利益」です。
しかし、このような資金の循環過程では説明できない項目もあります。
たとえば、貸付金です。
(資金の貸付の場合)
現金(1)→貸付金→現金(2)
この場合の貸付金は、後に費用になる訳ではありません。
したがって、「支出未費用」に分類することはできません。
また、収入があった訳ではありませんので、「収益未収入」でもありません。
新たなカテゴリーを設ける必要があるようです。
それが、「支出未収入」です。
「支出未収入」に属する勘定科目がそれほど多い訳ではありません。
貸付金の他には、立替金などが該当します。
このように動態論では、資産を「支払手段(貨幣))」、「支出未費用」、「収益未収入」、「支出未収入」からなるものとして捉えています。
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