なんか難しい事がいろいろと書かれています。
まあ、ほとんどわかってませんが(って、あんた)。
その中でちょっと気になったのが、今までとても大事だと考えられていた基本的な考え方で概念フレームワークに出てこないものの存在です。
一つは、「実現」です。
以前、企業会計原則の規定、(損益計算書原則一A)をご紹介しました。
そこでは、収入・支出を発生期間に割り当てろと規定されていました。
ただし、収益については、限定があって、未実現収益を計上してはならないことになっています。
つまり、収益については、「実現」したら計上することとされている訳です。
その「実現」という概念が、概念フレームワークには登場しません。
ただ、それに似た概念が登場しています。
概念フレームワークが「実現」概念にかえて用いているのが、「リスクからの解放」という考え方です。
「リスクからの解放」???
なんだかよくわかりませんが。
なぜ、リスクからの解放という新たな考え方を採用したのでしょうか。
果たして、実現概念を捨て去ってしまったのでしょうか。
この点については、日を改めて書きたいと思います。
実現概念については、いわば、別の言葉に置き換えたということのようですが、それ以外に、同様の物が存在しないものとして、「対応」と「配分」とがあります。
おおざっぱにいえば、従来の企業会計は、収益を実現主義で認識する。
その収益に対応する費用が該当期に配分される。
この両者の差引計算で損益計算を行っていた訳です。
対応と配分は、これまでの企業会計の核だった筈です。
概念フレームワークでは、これらの概念を捨て去ってしまったのでしょうか。
この点についても日を改めて書きたいと思います(って、やっぱり)。
概念フレームワークは、まだ討議資料の段階で、試験での直接的出題の可能性が高い訳ではありません。
しかし、これまでの核であるとみられていたものを変質、あるいは登場させないというのであれば、やはりこれは大きな転換ということになるのでしょう。
とするならば、試験委員の意識にものぼりやすく、試験での出題の可能性も高くなる筈ではないでしょうか。
このことは、討議資料をみなければいけないとか、リスクからの解放という考え方を知っていなければならないことを意味している訳ではありません。
ただ、従来の「実現」、「対応」、「配分」ということに対して、きちんとした理解をもって準備しておいた方がよいのではないかと思うのです。
では、より具体的に、どんな出題が想定されるのかは残念ながらわかりませんが、概念フレームワークが試験的な重要性を持つ日もそれほど遠くはないかもしれません。
概念フレームワーク(完←短か)
【関連する記事】
先生の記事にあります、
「対応と配分は、これまでの企業会計の核だった筈です。概念フレームワークでは、これらの概念を捨て去ってしまったのでしょうか。」についてとても興味をひかれましたが、先生のサイトのどこかにこの問題についての記述があるのでしょうか?
この記述は残念ながらありません。
従来的な概念とどういった形でおりあいをつけるかという点も考えておくと面白いとは思うのですがなかなかです。
概念フレームワークでは、純利益(収益・費用)を基本的には、リスクからの解放一本で考えるということでしょうから、従来の配分や対応を表だってとりあげるという感じにはなっていません。
もっとも従来的な論点である減価償却の問題などは依然と大きく変わるわけではありませんので、配分が必要ないという感じでもないかと思います(概念フレームワーク4章、52項参照)。
対応に関しても従来の対応による認識が行われた場合の考え方が大きく変わるわけではないと思います。
ただ、工事契約基準などを考えてみると工事進行基準と工事完成基準をいずれもリスクからの解放で考えているあたりを考えると従来の実現と発生をあわせた感じに近いのかなとはいえるかもしれません。
回答ありがとうございます。
対応、配分というのは、貸借対照表から損益
計算書を誘導することにも繋がる大事業なの
かも知れませんね。
概念フレームワークの後半部を読んでいませ
んのでしかっりと読んでみたいと思います。
毎日、少しづつ、概念フレームワークを読む
ように努めております。
概念フレームワークは、これからの「会計の
あり方」の指針になるものと思われますが、
会計公準については現行の会計公準が維持さ
れるていること、物価変動会計については特
に触れられていないと考えてよいのでしょう
か?
会計公準としては三公準が有名ですが、基本的には維持されているということでよいかと思います。
ただ、会計期間の公準はよいのですが、継続企業の公準という意味では、記述をあえて避けたようです(清算価値が必要な場合もありうる)。
また、貨幣的評価の公準は当然の前提として記述されなかったようですが、貨幣価値安定の公準という意味では、別に安定していたわけではありませんし、必ずしも貨幣価値の安定はうたっていないと思います。
物価変動会計も測定値に時価等を採用する場合には、そのことがある意味では対応しているということになるのかもしれませんが、一般物価変動会計については、対応していないと考えてよいと思います。
私は単純に考えておりましたが、色々とあるのですね。
概念フレームワーク(討議資料)を読んでいますが、限界を感じていましたところ、 詳解「討議資料■財務会計の概念フレームワーク」 中央経済社 という本を見つけて読み始めました。
討議資料だけでは分からなかったところで、分かるようになった部分もありますが、まだ、理解するためには遠い道のりにあると実感しております。
今回も懇切丁寧な回答をありがとうございました。
概念フレームワークを、毎日少しづつ読んでおります。(五里霧中です)
概念フレームワークにおいては、投資の目的によって、金融投資と事業投資について述べられています。
「資産」を「金融投資に係る資産」と「事業投資に係る資産」に分けることも出来ると思うのですが、金融資産の中には現金も含まれますが、これについては、「未投下」又は「回収済未再投下」の資産として、「金融投資に係る資産」には含まれないのでしょうか?
別の言い方をしますと、資産は「金融投資に係る資産」と「事業投資に係る資産」以外にも存在するのでしょうか?
結局、投下過程にない資産いうことになるのかも知れませんが・・・。
宜しくお願いいたします。
迷える子羊こと会計学勉強中
なかなか難しいですね。
そもそも企業活動を2つに分けて考えるのもおっしゃるとおり資産(やそれに伴う損益)をどのようにとらえるかが狙いなんだと思います。
その意味でいうと現金という他の資産の測定尺度にもなっている資産(これは評価の問題がありませんので)について、どちらかを考える実益は少ないかもしれないですね。
私もちょっとわかってないんですが、金融投資が市場での時価変動を狙った投資であるとすると
(1)きちんとした市場がある
(2)時価変動を狙う
という2つの要素を、「かつ」で結ぶ必要があるかと思います。
市場はあるけど時価変動を狙わない資産や、逆に市場はないけど時価変動を狙う資産もあると思います。
典型的な事業投資(資産)と金融投資(資産)はいいのですが、その狭間にあるものはけっこう難しいのではないかという気もしています。
煮えきらなくてすいません。
とんでもありません。
愚問であっても、常にともに考える姿勢をとっていただいて、とても恐縮しますと同時に、ソクラテスメソッドという言葉が頭に浮かびました。
概念フレームワークには、資産の定義はあっても資産の分類がない(本当?)ことから、何か分類しないではいられない気持ちになってしまいますのは、私の悪癖のようです。
分類がないのは、概念フレームワークが今までの体系化とは別の道を歩んでいるということでしょうか。
概念フレームワークは資産を認識測定をする場合には、投資家の意思決定に資するために「投資ポジション」と「投資の成果」を開示するという会計目的に適した方法を投資目的に応じて採用すべきことを言っているのであって、個別の資産については、分類等を含めて個別の企業会計基準に委ねるということでしょうか。
却って、概念フレームワークでは指針を与えることに徹したほうがその存在意義を十分に発揮できるように思えてきました。
今回も貴重なご回答を、本当にありがとうございました。
いえいえどういたしまして。
ソクラテスメソッドという言葉を知らなかったですが、思わず調べてしまいました。
概念フレームワークはとてもざっくりですね。
事業投資と金融投資という考え方も一部に出てきますが、それを軸に規定しているというよりは背後にそんな考えを持っているといったあたりかもしれませんね。
概念フレームワークでは測定指標も羅列しているだけに過ぎません。
事業投資と金融投資という考え方を持ち込んでも、金融投資はともかく、事業投資をどうするかはまた別に考える感じではないかと思います。
個別の資産等については個々の会計基準をみるよりないといったところかもしれませんね。
個別の基準をみつつ、概念フレームワークもみつつといった感じで学習も進めていく感じなのかなあとも思っています。
概念フレームワークでは、固定資産の交換、贈与をどうように考えるのかを考えようと思っていたのですが、そこに行く遥か手前で、基本的な言葉につまづいて混乱しております。
収益費用の測定基準としての収支額基準、資産の評価基準として原価基準があり、これらの前提となる考え方が測定対価主義=支払対価主義=取引価格主義であり、この3つは同じことをいっているのでしょうか?
宜しくお願いいたします。
なかなかおもしろい(難しい)ところですね。
3つの言葉の私の習熟度が低いのでなんともいえませんが、基本的には同じように思えます(ちょっと探索してみます)。
概念フレームワークでの交換の考え方は興味深いですね。
同種資産は、簿価の引継ぎということでよいのでしょうが、異種資産の交換の場合ですね。
ちょっと私も考えたことがあるのですが、収益の測定(第四章)あたりをみると取得資産の時価という感じかと思えます。
ただ、交換を売却とその売却代金による再取得取引と擬制する考え方はかなり自然でもあるかと思います。
前者だと取得資産の時価で、後者だと売却資産の時価ということになって、若干の食い違いを生ずる場合もあるかと思いますが、うまく整理できていませんので、何かよい知恵があったら教えてください。
滅相もありません。
交換については、異種の場合には、「交換を売却とその売却代金による再取得取引と擬制する考え方」で、単純に良いと考えておりまして、浅はかでした。
単なる思いつきなのですが(←いつものことでしょ。)、概念フレームワークでは、資産の評価の一つとして、取得原価を挙げていますが、この取得原価の意味が原価即事実説に基づくものなのか、原価即価値説に基づくものかということと関係していないでしょうか?
(原価即価値説の方が整合的でしょうか)
贈与により取得した場合には、経済的資源ということで、取得資産を時価で評価した上で借方に計上し、貸方は株主から出資に基づくものでないので、株主資本以外の純資産に計上するのが整合的と考えてよいでしょうか?
(現行制度はそうなっていないみたですが)
連続意見書などをみていても、有価証券と固定資産の交換時に固定資産に譲渡した有価証券の時価(適正な簿価)をつけるといっていますので、売却して再取得を想定していると考える方が自然なんでしょうね。
ただ、概念フレームワークの書きっぷりがちょっと気になっているというか、よくわかっていません(特に第四章の(16)を読むと取得資産の時価を想定しているようですので)。
もっとも、基本的には、交換は等価が前提になっているハズではあるでしょうから、それほど大きく結論的には違いはないのかもしれません。
原価を取引の事実と考えるか、価値と考えるのかという論点もありますね。
私がメインで学習していた時代(ずっと昔)は、原価即事実説がメインで、贈与等があったときだけ原価即価値説が顔を出すという感じでよかったんでしょうが、これも少し考えなおさないといけないんでしょうね。
贈与を受けた資産については、制度上は、利益ということになるかと思いますが、利益に計上してはまずいケースであるなら(国庫補助金等)、理論的には、おっしゃるとおり、株主資本以外の純資産(繰延収益)ということになるかとは思います。
いつも、的確かつ懇切丁寧な回答を有難うございます。
概念フレームワーク4章(44)を見ておりましたので、異種資産の交換の場合に、収益を認めるには、交換=売却+購入として、売却に4章(44)を当てはめるしかないのかと思ってしまいましたが、4章(16)ということだったのですね。
ところで、それ以前の問題なのですが、異種資産として有価証券が挙げられていますが、投資有価証券は固定資産に分類されていますが、現行制度上は、投資有価証券との交換による固定資産の取得は同種資産との交換とされているのでしょうか?
お忙しいところ、度々の質問で恐縮いたします。
これは異種資産の交換ということでよろしいのではないでしょうか。
広い意味では、いずれも固定資産ということかもしれませんが、同種(同用途)の資産ではありません。
投資有価証券に対するリスク(価格変動リスク等)と固定資産に対するリスク(事業リスク)とでリスクの質が変わっているというこでしょうか。
いつも、的確かつ懇切丁寧な回答を有難うございます。
なるほど、よく分かりました。
有価証券の時価又は適正な簿価とされていることの意味がわかりました。
毎日少しづつ、概念フレームワークを読んでおります。
今、固定資産の減損について、概念フレームワークで考えております。
概念フレームワークには、投資の状況に応じた多様な測定値が用意されています。
固定資産は取得原価で測定されますが、減損の兆候が認められる場合には、正味売却価額と利用価値の何れか大きい数値として測定されると思います。
減損の兆候の発生により投資の状況が変わったとして、測定値が変わることは、概念フレームワークで説明できると思います。
一方、測定値が変わることにより、評価損としての費用(損失を含む)が生じますが、これについては、
1.交換に着目した費用の測定
2.市場価格の変動に着目した費用の測定
3.契約の部分的履行に着目した費用の測定
4.利用の事実に着目した費用の測定
のいずれに該当すると考えたらよいのでしょうか?
(3.4.は違うと思うのですが・・・。)
宜しくお願いいたします。
なかなか難しいですね。
減損は、収益性の低下に伴う投資額の修正処理ということですので、4の変形に近いのではないかという気がいたします。
そもそも利用に対応して費用の測定を行うことは技術的にも難しいです。
減価償却なども利用期間にざっくりと割り振っている感じだと思います。
この場合の減価償却費は、4ではないかと思います。
我国の基準では、いったん固定資産を売却して、再投資するような形が想定されている訳ではありません。
あくまでも、投資額のうちの将来的に回収ができない(であろう)金額を切り捨てる処理が減損処理です。
回収可能価額を示すための処理というよりは、回収不能額を帳簿価額から切り離すという感じに近いように思います。
ここはとても難しいですね。
いつも懇切丁寧かつ論旨明瞭な回答有難うございます。
なるほど、4.の変形なのですね。
減価償却は4.かなと思っていましたが、減損についてはよく分かりませんでした。
減価償却→臨時償却→減損としますと、右にいくに従って、4.の「利用の事実に着目した費用の測定」という表現が難しくなっていくような感じがあります。
特に、初めから事業投資に失敗したような場合の減損には、利用の事実もあまりないと思われるからです。
4.の表現が「利用という観点からの費用の測定」でれば印象も違ってくるのですが・・・。
また、臨時償却につきましては機能的減価ということですが、物理的な磨耗等による能率低下であれば、4.の表現が妥当するとおもえるのですが、新技術の開発による、機能的陳腐化である場合に、利用の事実ということが妥当するのかよく分かりません。
減損と同様に、4.の表現が「利用という観点からの費用の測定」でれば印象も違ってくるのですが・・・。
私は4.の「利用の事実に着目」を狭く捉えてすぎているかも知れません・・・。
確かにそうですね。
難しいです(そればっかですが)。
そもそもの減価償却も「利用の事実に着目」したのか?というケースも少なくないかと思います。
例えば、設備を途中で利用しなくなった場合(生産が過剰になって、使用を休止したような例)には、償却は継続するかと思います。
このようなケースでは、利用しているのかといえば利用はしていません。
しかし、広い意味では、その設備を含む企業の活動単位の中では補欠のような役割を与えられているといえるのかもしれません。
ストックとしての評価換えだということがはっきりしていれば、(2)の市場価格の変動に着目したの方がすっきりするのですが、減損損失も戻し入れず、その後の減価償却も継続するということですと、当初の取得原価の配分の修正として生じたものとして(4)に近いのかなという感じです。
いつも、懇切丁寧かつ論旨明瞭な回答有難うございます。
再度、4.を読み直してみますと、先生の仰っていることが的確だとわかりますと同時に、自分が字面しか読んでいないことがわかりました。
ただ一点、単なる思いつきなのですが(←いつもそうでしょ。)、減損で正味売却価額とした場合には、スクラップ価格ということで、事業の継続性は断たれていると考えますと、交換を擬制して固定資産を一旦売却して、そのお金でスクラップを購入したということも出来るでしょうか?
減損で正味売却価額と使用価値を比較していずれか大きい金額をとるというのは、回収可能額を出すためだと思います。
投資額のうち回収可能額を残して、回収不能額を切り捨てる。
これが減損だと考えると正味売却価額をとるか、使用価値をとるかの違いでその後の属性が変わるとは考えにくいように思います。
もちろん完全に使用をやめて、売却することが確実であるということならおっしゃるような考え方もできるかもしれませんね。
今回も懇切丁寧かつ的確な回答有難うございました。
とても勉強になりました。
毎日、少しづつ概念フレームワークを読んでおります。
概念フレームワークには財務報告の目的として投資家による企業成果の予測と企業価値の評価に役立つような、企業の財務状況の開示にあるとしています。
ここでいう企業価値の評価とは何をいうのでしょうか?
宜しくお願いいたします。
これは文字どおり、企業がどのくらいの価値を持つかということではないでしょうか。
会計学でも合併なんかのときに、いくつかの方法で企業を評価することがありました。
収益還元価値法、純資産額法、株式市価法なんかです。
会計学で念頭においているのは、企業が生み出すCFをすべて予想して、それを一定の率で割引く方式です。
株を買う投資家も企業価値を自分なりに評価して、それと現実的な株価とを比べて、投資の判断を行うことになるかと思います。
いつも、懇切丁寧かつ的確な回答を有難うございます。
お恥ずかしい話しですが、根本的なところが欠落しておりました。
父も株をやって、お小使い程度を得ていますが、そういうことは考えていないと思います。(←見くびり過ぎているでしょうか(笑))
父は過去の最安値で拾っているという感じですが、これも「企業価値を自分なりに評価して、それと現実的な株価とを比べて、投資の判断を行う。」ということなのかも知れません。
家業がありますので、貸借対照表や損益計算はありますが、静態論以前の意識です。
企業評価にしても、本社ビルの所在地、知名度、資本金、従業員数とかで判断していますので、「貨幣的評価の公準」さえも出来ていませんし、勝手に「のれん」で評価していますので、基本的な会計マインドが欠落しております。
経済学でも「トービンのq」とかありますが、正直、ピントきませんでしたが、やっと分かりました。
また、マクロ経済学では、債権価格も、不動産価格も収益還元法?で行うようですが、
であれば会社の価値というのも収益還元法?で求めることが出来ますね。
なるほど、経済学は社会的会計といわれているみたいですが、関連しているのですね。
概念フレームワークを毎日、少しづつ読むように努めております。
概念フレームワークでは投資家の意思決定有用性ということで、投資ポジションと投資成果の開示を規定していますが、これは独立的(?)に行われると考えてよいのでしょうか?
つまり、それぞれの開示目的にもっとも適した測定が行われるであって、一方の測定方法に従属するものではない。
収益費用アプローチでは収益・費用の認識測定が先にあり、それに整合するように資産、負債の評価方法が決まってしまう。
(結果、実現主義と原価主義とは表裏の関係にあると言われる。)
これに対して、概念フレームワークでは「企業価値評価の観点」+「企業成果の予測の観点」から「投資ポジション」を適切に開示するために投資の状況に応じた資産、負債の測定が行れるともに、「投資の成果」を適切に開示するために収益、費用の測定がなされ両者には主従の関係はない。
そして、両者のミスマッチは株主資本以外の純資産によって調整される。
この点、以前は純資産=株主資本であったために両者の調整のための遊びがなく、損益の測定を重視すれば資産、負債の評価が従属的に決まっていた。
ということが出来るでしょうか?
なかなか難しいですね(そればっかですが)。
投資を事業投資と金融投資に分けて議論するとおっしゃる感じ近いのではないかと思います。
概念フレームワークでは、純利益と包括利益の二本建ですので、投資のポジションと成果の二本建に近いのかもしれません。
ただ、概念フレームワークでは、ストック面を重視しつつ、その主眼はやはりフロー(純利益)にあるといってもよいかとも思います。
概念フレームワークでは、成果の確認にリスクからの解放という考え方を用いています。
ザックリとは、企業の投資を事業投資と金融投資とに分け、事業投資は原価(→配分)、金融投資は時価で測定します。
事業投資における成果の確認は、従来と基本的には同じです。
金融投資については、基本的に時価評価されますが、成果を確認できるものに関してはこれを純利益に取り込み、確認できないものは、純資産へというのが現状という感じでしょうか。
損益計算書の最終値が純利益である以上、現行制度上、重視されている利益は、純利益であり、ストックをも重視したといったあたりが落とし所のような気がいたします。
いつも、論旨明瞭な回答有難うございます。
仰るように、概念フレームワークでも事業投資については、収益費用アプローチを引きずっているということが出来るかと思います。
別の言い方をしますと包含しているということが出来ると思います。
しかし、次のように考えることは出来ないでしょうか?
事業投資の測定について、基本的に取得原価を用いているわけですが、これを収益、費用の認識測定に整合するための測定方法と捉えるのではなくて、事業投資という投資の状況からふさわしい測定方法であると捉えます。
例えば、固定資産についての時価評価については事業が継続されるという投資の状況では無意味であり、取得原価のほうが合理性があると思われます。
従って、投資の状況が変わり(例えば減損の兆候)により利用価値又正味売却価額で測定することがふさわしくなる場合があると思います。
しかし、これは、あくまでも「投資のポジション」の開示の観点からの投資の状況に応じた測定値を採用するのであって、収益費用の認識測定とは建前上は別個のものと考えます。
測定方法を変えたことで、評価差額が発生しますが、これについては「投資の成果」の開示の観点(投資リスクから解放+収益費用の測定の観点)から収益費用として計上するか、株主資本以外の純資産として計上するかを独自に決めるものとします。
結論としては、固定資産の減損会計基準によって費用として計上されるものと思います。
上記で「収益費用の認識測定とは建前上は別個のものと」としましたが、あくまでも建前ですので、実は予定調和があるものと思います。
そして、調和しきれなかったものは株主資本以外の純資産に入れてしまいます。
とんでもない的外れなことになっていなければよいのですが、宜しくお願いいたします。
会計理論の枠組みというのは、いろいろ考えられるのだと思います。
以前は、損益計算を主軸に据えていました。
新しい流れとしては、貸借対照表を主軸に据えるものが勢力を増しているようです。
純然たる資産負債アプローチを想定した場合には、資産と負債の差額としての純資産をしっかりとらえて、その変動額としての包括利益に力点を置くことになるかと思います。
しかし、現行制度上は、必ずしもこのような純然たる資産負債アプローチがとられているわけではありません。
やはり収益費用アプローチを主軸としていると考える方がより近いのではないかと思っています。
柔軟性を持った収益費用アプローチといったところかもしれません。
概念フレームワークは、基準設定の指針としての役割も有するわけですから、やや広めのスタンスにならざるを得ないかと思います。
その概念フレームワークから会計のあるべき姿を語るのであれば、いろいろな考え方はあり得ると思いますが、少なくとも事業投資に関しては、収益費用アプローチを補正しているというのが現行制度の考え方としてはしっくりくるように思います。
投資のポジションと成果を示すのが財務会計の目的ではありますが、制度上、実際に採用される利益概念が純利益にとどまっている以上、投資のポジションを前面に押し出して、全体を考えるのはやや無理なのではないかと思っています。
例えば、災害等により固定資産や棚卸資産に損失が生じた場合などでも、ストックの価値を評価に利用することはあるかもしれません。
これらの評価換えは、無論、従来のアプローチでも行われます。
固定資産の減損や棚卸資産の評価もこれと全く同じというわけではありませんが、従来的なアプローチの補正と考えるべきなのではないかと思っています。
今回も懇切丁寧かつ論旨明瞭な回答有難うございます。
概念フレームワークは、投資決定有用性ということでの投資ポジションと投資の成果の位置づけを同等にしているように見えることから、前信のような考え方を試みましたが、将来はともかく、やはり現状では、先生の仰る認識が正しいと思います。
今回もまた私の愚問に辛抱強く、お付き合いいただき有難うございました。
いつも的確かつ真摯な解答を有難うございます。
概念フレームワークにおいて市場価格は、購買市場と売却市場が区別されていない場合として、有価証券が挙げられ、区別されている場合として棚卸資産が挙げられるかと思うのですが、不動産のような固定資産はどちらと考えてよいのでしょうか?
宜しくお願いいたします。
ちょっと考えたことがなかったので難しいですね。
一般に不動産は、有価証券の場合のような証券取引所やそれに準ずるところがありません。
そもそも全く同じ不動産はないでしょうから成立する余地もないでしょう。
購買市場と売却市場が区別されていない場合というのは、典型的には、誰もが同じ条件で参加できる証券取引所のようなものを想定していると思います。
一般的には、単一の市場はないということになるかと思います。
ですので、区別される場合になるかと思います。
固定資産の減損なんかで使う正味売却価額は、概念フレームワークの正味実現可能価額と同じですね。
もっとも不動産を証券化して、これを市場で販売するなんていう場合には、単一の市場というケースもあるかもしれませんね。
なるほど、考えてみますと、購入市場と売却市場の区別のないほうが特別なのですね。
有価証券には新品と中古の区別はありませんし、仕入値と売値の違いもないですものね。
これに対して、販売目的の棚卸資産は仕入値と売値の違いがありまし、固定資産にしても、新品と中古で売る場合に値段が違いますし、新品に近い新古品でも値段が下落してしまうと聞いております。
また、固定資産の評価の場合には、継続使用又売却価額での評価ということになりますので、使用価値か正味売却価額ということになりますので、再調達原価を考える必要性もないのかもしれませんね。
いつも的確かつ真摯な回答有難うございます。
概念フレームワークでは、純収益、包括利益とあります。
一方、利益概念については実現利益概念、投資のリスクからの解放概念、実現可能利益概念とありますが、概念フレームワークでは、純利益について実現利益に投資のリスクからの解放概念による利益を追加して拡大し、さらに実現可能利益を含めて包括利益としていると考えてよいのでしょうか?
逆にいいますと、包括利益の限界は実現可能利益までと考えてよいのでしょうか?
これはなかなか難しいですね。
これまでの「純利益」と「実現基準」、
今の「純利益」と「リスクからの解放」がつながっているというのはよいと思います。
問題は実現可能概念だろうと思います。
実現可能概念については、いろんな人がいろんなことをいっているといった状況だと思います。
企業会計原則が実現についてふれていたり、概念フレームワークがリスクからの解放についてふれているといった我国で足がかりとなるようなものがないので微妙かもしれないですね。
考え方としては、リスクからの解放に近い形で考えるタイプの方が一般的かもしれません。
この場合には、むしろ純利益の認識の基礎として実現概念や実現可能概念が考えられるのかもしれません。
もっともこの場合の実現可能概念は、リスクからの解放に近いものになるかと思います。
一方で包括利益の認識の基礎に近い形で考える考え方もあり得るようには思います。
我国のその他有価証券についても利益認識が可能なように実現可能概念を拡張すれば包括利益の認識の基礎になるという考え方もあるかもしれません。
ただ、この場合にも実現概念はよいにしても何をもって実現可能かをきちんと考えておかないといけないかと思います。
こんな考え方をとることが可能なら包括利益を実現可能利益と考える余地はあるのかもしれません。
いつも、的確かつ真摯な回答有難うございます。
そうなのですね、実現可能性概念については、会計基準等に記述がないのですね。
私が今回、参考にしました資料は、有価証券の扱いと関連しまして、その他有価証券が評価差額を包括利益とされることに言及したものでした。
純利益としては無理であっても包括利益として計上されるためには、一定の要件が必要であり、その要件が実現可能性概念かなと思ってしまいました。
純資産の項目には、評価・換算差額等として、「その他有価証券評価差額金」の他に「繰延ヘッジ損益」、「土地再評価差額金」がありますが、これらが包括利益とされるとすれば、その要件(根拠)はどのように考えたらよいでしょうか?
また概念フレームワークでは、包括利益については、純資産の変動額云々としているだけで、その要件を示していないようですので、個別の会計基準等に資産の評価基準を採用する際の根拠(要件)に委ねていると考えるべきでしょうか?
概念フレームワークでも純利益を重視しているのは、そこに業績指標の意味を見出しているからではないかと思います。
企業ががんばった成果としての利益が純利益です。
何をもってがんばったといえるのか。
成果が出たといえるのか。
それを考えているのが実現概念であり、リスクからの解放といえるかもしれません。
実現可能概念もおそらくはこのような文脈の延長にあるのではないかと思います。
純利益に対して、業績指標といえるかに疑問の残るのが包括利益です。
いわばどれだけ財産が増えたかが包括利益ということになるでしょうからむしろその原因は問わないし、利益計上にあたっての要件というより純資産が増えたから包括利益というべきかもしれませんね。
ただ、やっかいなのが、包括利益を投資家は結果として役立つとみているかがはっきりとわかっていない点です。
ざっくりと考えると純利益の方が業績指標としての意味もありそうですが、どちらが投資家の投資判断に有用かの結論は出ていません(たぶん)。
結論の出ていない段階で一方的に結果のみを強制するのはよくないというのが、概念フレームワークの立場だとは思います。
仮に包括利益が単なる純資産の増加という以上の意味(業績指標等)を持つ(持たせる)なら何らかの形で要件的なものは必要かもしれませんね。
いつも、懇切丁寧かつ的確な回答有難うございます。
なるほど、実現利益概念、実現可能利益概念、投資のリスクからの解放概念は業績指標の意味を見出しているのですね。
疑問を整理してみたのですが、純資産が増えたといえるためには、特に資産の評価と関連して、どのような条件が必要かというものでした。
有価証券の場合には、市場価格が存在しても、純資産が増えたと認められない場合、純資産が増えたと認められるけれども純収益とは認められない場合、純資産が増えたと認められ純収益としても認められる場合があります。
概念フレームワークの項目58辺りを見ていますと、「現金又はその同等物への転換が容易となった」ことが純資産が増えたと認められる条件かなと思えます。
しかし、投資有価証券が認められずに、その他有価証券は認められていることから、この両者の現金又はその同等物への転換の容易の程度の間に境界があるのかと思いました。
「土地再評価差額金」について純資産が増えたといえるには、「現金又はその同等物への転換が容易となった」かではなくて、土地再評価法によって政策によって認められるみたいですので、個々の資産について、純資産の増加といえるための要件はそれぞれ別なのかもしれませんね。
誤:純収益
正:純利益
失礼をいたしました。
資産×× 評価益××
こんな仕訳をする前提には、借方の資産が現金等にかなり近い必要があるということなんでしょうね。
実現概念での実現の要件は、資産の引渡し等と現金等の受領でした。
この延長で考えるとすれば、資産が引渡し可能であり、現金等を受領したのと同視できれば実現概念の延長で説明できそうです。
事業資産については、資産そのものを現金等と同じ(ようなもの)と考える余地はありませんので、実現概念の延長では説明できないと考えるのが自然だと思います。
この場合には、おっしゃるように資産を時価評価した方がよいという何らかの判断が別途もとめられるということでよいのではないかと思います。
お陰さまでスッキリいたしました。
純資産の増加は、新株予約権の増加のように利益と関係なく計上されるものもあり、包括利益とはいっても利益?という部分もあり、利益概念で捉えることは無理のようですね。
唐突なのですが、資産概念として用役潜在力(サービスポテンシャル)或いは将来の収益獲得能力と言われているものがありましたが、これは概念フレームワークの資産概念である経済的資源によって置き換わってしまったのでしょうか?
経済的資源は用役潜在力を発展進化させたものなのでしょうか?
サービスポテンシャルという考え方はそもそもは、動態論のもとで資産を一元的に捉えるためものという感じだと思います。
動態論は、収支と損益との関係に着目した考え方といってよいと思います。
そこでの資産は貨幣性資産と費用性資産といった二元的に示されることも多いです。
サービスポテンシャルといったやや抽象的な考えを持ち込まないと一元的に考えることは難しいです。
その根っこに近いところには、現金(これは当然資産ですが)も含めて資産を一元的に定義するのがなかなか難しいという面があるのかもしれません。
逆にいうと現金を含めて資産をそれなりに定義すると結構、似たりよったりになってしまうのかもしれません。
サービスポテンシャルが抽象的である分、今でも十分に通用しそうですが、概念フレームワークでは経済的資源、国際会計基準等でも近い表現がとられているようです。
特徴は従来よりもよりキャッシュ・フローの獲得に目が向いているといったところかもしれません(もっとも企業の生涯を仮定したCFと利益は同じでしょうから、将来の収益獲得能力といってもまるで外れている感じでもないのかなあとは思っています)。
とてもよくわかりました。
似たような言葉が出てきては、頭の中で言葉が踊ってしまいますが、議論の沿革といいますか、流れを見ますとそう表現せざる得ない理由がわかるのですね。
似たよう表現ということでは、会計学でいうところの損益取引・資本取引と簿記で使われる損益取引・交換取引なのですが、基本的には損益取引の意味は同じと考えてよいのでしょうか?
(利益処分に関する取引はよく分かりませんが・・・。)
また資本取引は、簿記では交換取引と考えてよいのでしょうか?
追伸:先生もお気づきのように、私は基本的知識が不足しておりまして、外部向けの先生のオプション講座?でもありましたらお知らせ願いないでしょうか?
私は東京に住んでおります。
言葉は大事ですよね。
私も大事にしたいと思っています。
でも、言葉を大事にしながら、御自分でよく考えてらっしゃるのはとても立派だと思います。
資本取引・損益取引に関しては、考え方に分岐があるようです。
ざっくりとは、利益処分取引を資本取引とみるか、損益取引とみるかです。
これは難しいです。
企業会計原則を作られた方は、損益取引と考えていたようですが、資本取引と考える方も多いです。
私は、どっちでもいい(考える実益がない)という考えに近いです。
ここの違いは置いておいて、どちらの損益取引も同じ感じではないかと思います。
資本取引は、交換取引と考えてよいと思います。
会計学勉強中さんには、これまで考えた事のなかった御質問を数多くいただいています。
直に御質問をいただくととても楽しいと思うのですが、残念ながらオプション的な講座等はいたしておりません(すいません)。
いつも、懇切丁寧かつ真摯な回答有難うございます。
以前は、言葉に余りにも無関心過ぎて、それを指摘されたことがあり、それがトラウマになっているかも知れません。(あつものに懲りてなますをふくというのでしょうか)
しかし、「こだわり」と「わりきり」のバランス感覚が大事ですね。
ただ、先生の御回答により、以前からすっきりしなかったことが、氷解してしまいますので、ちょっと調子にのっております。
ただ、恐ろしいのは、これは聞くまでもないと思っていたものが、自分の全くの見当はずれであって、唖然としてしまうことが多々あることです。(←会計のセンスがないと言ってしまえばそれまでですが)
先生には、お礼方々、一度御挨拶にお伺いしたいと思っていましたことも、オプション講座に参加したいという動機の一つでしたが、開講されていませんのはとても残念です。
いつも懇切丁寧かつ的確な回答有難うございます。
資産の外形的な性質に着目した分類として、金融資産と事業資産がありますが、この場合の外形的な性質とは、実物資産か否かという理解でよいのでしょうか?
会計基準に定義のあるのは、金融資産だけかと思いますが、そんな感じでよいかと思います。
金融資産を定義しているのは、金融商品会計基準の適用を受ける資産の範囲を決める意味が大きいかと思いますので、分類をしっかりさせる意味合いはやや乏しいかもしれないですね。
いつも的確かつ真摯な回答を有難うございます。
とてもよく分かりました。