ただ、当初の手形取引(受取手形××× 売上×××)の金額から金利部分が除かれていないと、手形割引時の受取手形は、理論値よりも大きくなり、その分、手形売却損も大きくなってしまいます。
では、理論的には正しい受取手形の金額はというと、いわゆる償却原価法を適用した場合の帳簿価額、すなわち、償却原価であるべきでしょう。
現金正価100円、手形売価120円、手形期間は2月、1月後に決算、2月後に決済という例で考えてみましょう。
販売時:(借)受取手形100 (貸)売 上100
決算時:(借)受取手形 10 (貸)受取利息 10
決済時:(借)現金預金110 (貸)受取手形110
受取利息 10
決算時の受取利息は、受取手形100に対するもので、決済時は、(100+10)=110に対するものですから、本来は、一定額ずつ(定額法)ではなく、(+10)も加味して配分する方(利息法、利回法)が合理的です(でも面倒です)。
また、決算時の受取手形110は、仮に利息法を採用したとしても、決算時の時価という訳ではありません。
あくまでも当初の金利の状態が続いたと考えて計算されたものです。
その間に金利の水準が変れば、受取手形の時価も変動します。
金利水準があがれば、受取手形の時価は下がるでしょうし、逆に金利水準が下がれば、受取手形の時価は上がるはずです(金利が10%で100円の手形は、金利が20%になると100円より安くなる筈です)。
本来は、償却原価と時価との差額が売却「損益」になる筈です。
つまり、一般的な会計処理を行った場合の手形売却損には、「本来の売却損益」と「手形割引時から満期までの期間の利息部分」とが混じっているのです。
日商検定では、手形売却損が主たる科目とされ、全経では、模範解答が、支払割引料とされるある種の混乱が生ずる原因は、そもそもの取引(ないしは会計処理)が理論的には正しい姿ではないからなのでしょう。
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