従来の手形割引の会計処理は、いわば売買説と金融説の折衷であった訳ですが、新しい会計処理は、売買説で貫かれています。
もっとも、手形割引に対する法的な考え方や経済的な見方に変化があった訳ではありません。
変ったとすれば、それは、あくまでも会計の側なのです。
手形割引の会計処理に関係を有する会計基準には、金融商品に係る会計基準(金融商品会計基準)があります。
金融商品会計基準では、金融資産について、権利(の支配)が他に移転した場合に、金融資産の消滅(貸方・金融資産)を認識すべきこととされています。
受取手形は、商品を売った代金をよこせという権利です。
売掛金との違いは、それが手形という仕組みにのっかっていることといってよいでしょう。
手形を割り引いて(銀行に譲渡して)、お金を受け取ってしまえば、もちろんそれ以上、お金をよこせという権利はありませんから、権利は他に(銀行)に移転しているといってよいでのしょう。
金融資産の消滅の認識を行う必要がある事になります。
つまりは、貸方・受取手形(資産の減)という仕訳をきる必要があるという訳です。
ただし、この処理については、必ずしも従来から大きく変った訳ではありません。
従来も、貸方・受取手形という処理は行っていたのです。
従来は、偶発債務の処理との関係で、貸方・受取手形としない処理(評価勘定法)があったにすぎません。
貸借対照表においても受取手形の金額に割引手形の金額が含まれることはありませんでした。
つまり、貸方・受取手形は、金融商品会計基準が導入されたからそうなったというのではなく、以前からそうだった訳です。
以前と変ったと考えられるのは、やはり、借方・手形売却損です。
では、本当に手形売却損という勘定科目は適切なのでしょうか?
支払割引料では不適切なのでしょうか?
それともどちらでもよいのでしょうか?
謎は深まるばかりです(って、ホントか)
つづく。
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