2007年03月01日

リスクからの解放とは何か(8)

概念フレームワークでは、投資家をメインの利害関係者におき、その投資意思決定を重視しました。
投資家の行う投資意思決定に対する有用性を会計情報に求め、結果としての業績(利益)報告を重視したのです。
結果としての業績(利益)報告を行うためには、投資目的に応じた利益の認識が考えられるべきでしょう。
このような視点から、投資目的に応じた成果が確定した段階で利益(収益)を認識する考え方が「リスクからの解放」です。

投資目的にてらして、期待しているとおりの確定した成果を獲得した段階で利益(収益)を認識する。
それがリスクからの解放です。
事業投資の目的は事業に資金を投じ、その資金を増やす事にあるでしょう。
事業投資の成果は、典型的には、増加した資金を手にすることにより確認できます。
それは、事業投資(たこ焼)の場合で言えば、商品を引渡した段階と同じでしょう。
金融投資(売買目的有価証券)についていえば、時価の変動そのものです。
時価の変動そのものを利益として認識すべき事になる訳です。

ここで、リスクからの解放という考え方を従来の実現概念や実現可能概念と比べて簡単に考えておきましょう。
伝統的な実現概念では、実現を第三者との客観的な取引、つまりは販売(引渡)におきました。
これに対して実現可能概念では、引渡を引渡(売却)可能という状態まで拡張しています。
リスクからの解放は、視点がやや異なりますが、投資目的に対する確定した成果が獲得された段階を考えています。

実現 < リスクからの解放 < 実現可能

このような考え方の違いは、事業投資の面では大きくあらわれません。
商品を引渡せば、それは客観的で確実で、もちろん成果は確定しています。
いずれの考え方をとっても収益(利益)は、認識されます。
大きな違いをもたらすのは金融投資です。

売買目的有価証券についていえば、従来の実現概念では、損益は認識されません。
第三者との具体的な取引(売却)がないからです。
リスクからの解放や実現可能概念をとった場合には、いずれも利益(損益)は認識されます。

このような収益(利益)の認識の考え方とそのもとでの利益概念は、次のように整理する事ができるでしょう。

実現……………………昔の純利益
リスクからの解放……今の純利益
実現可能………………包括利益

このように考えるとリスクからの解放の意味が随分とはっきりとして、きませんか?(←疑問形ですな)

リスクからの解放とは何か(9)へ

リスクからの解放とは何か(9)

概念フレームワークでは、財務報告の目的を投資家の投資意思決定への支援におきました。
求められる会計情報は、投資家の投資意思決定に有用性を有するものです。
投資家の投資判断に際して、企業の結果としての成果に関する情報は不可欠でしょう。
その結果としての業績指標である利益(純利益)を示すための考え方がリスクからの解放です。

リスクからの解放は、投資目的に対して期待どおりの成果が確定した段階で利益(収益)を認識する考え方です。
事業投資(たこ焼)の目的はその事業を通じてキャッシュを増加させることにあります。
利益は、その事業目的にてらして確定した成果が得られた段階、つまりは、商品を引渡し、現金を受領した段階で認識されます。
事業投資についてのそのタイミングは、従来の実現の考え方と何ら異なりません。

大きく異なるのは、金融投資(株式等)です。
売買目的有価証券のように時価の変動を狙って投資を行うのであれば、時価の変動そのものを確定した成果と考えることができるでしょう。
同様に株式といっても子会社株式のようにその売却に制約のあるものもあります。
子会社株式についてまで、時価の変動で損益を認識すべきという事にはなりません(むしろ事業投資というべきでしょう)。
このように投資目的に応じて、利益(収益)の認識を考えるところにリスクからの解放の特徴があります。

このようにリスクからの解放は、事業目的に応じて利益(収益)の認識を考えています。
財産法的な利益である包括利益を損益法的な利益である純利益に絞込むために概念フレームワークがとった考え方、それがリスクからの解放です。
いわば資産負債アプローチにおける利益(包括利益)から収益費用アプローチにおける利益(純利益)へのフィルターがリスクからの解放といってよいでしょう。

資産負債アプローチと呼ばれる新しい会計の考え方のもとでは、まず、資産と負債が定義されています。
我国の概念フレームワークでも、まず資産と負債を定義し、その差額を純資産としました。
そして、純資産の変動額を包括利益としています。
ここまでは、我国が範とすることの多いアメリカや国際会計基準(だったかな)と同じようです。
しかし、概念フレームワークの特徴は、これとは別に純利益を定義した点にあります。
純利益を包括利益から独立させて定義し、純利益から収益と費用を導いています。

純利益には、包括利益にはない(であろう)結果としての業績指標という意味があります。

しかし、時代は、どうやら純利益ではなく、包括利益へと傾いているようです。

我国では制度上、包括利益は示されていません。
しかし、時代は包括利益を選びそうな雲行きです。

一体、私はどうすればよいのでしょうか?(←って、アナタですか?)

リスクからの解放とは何か(10)へ

リスクからの解放とは何か(完)

借方・貸方の語からも想像できるように、複式簿記の誕生以来、企業をとりまく利害関係者の大きな関心は企業の債務返済能力にありました。
貸した金が果たしてきちんと返ってくるのかに大きな関心がよせられていたのです。
そこでの会計は、資産の売却価値の算定に重点がおかれ、貸借対照表も財産の一覧表というべき性格を有していました。
いわゆる静態論の考え方です。

しかし、世界的な株式市場の混乱を経て、貸借対照表の数値を不確実な指標としての時価に代え、確実な指標としての原価に置き換える動きがみられました。
そこでは収益を極めて確実な段階(実現)で計上し、費用面では、確実な指標としての原価を割り振る事(配分)に主眼がおかれ、確実さを重視した利益が算出されていました。
いわゆる動態論の登場です。
動態論のもとでの資産は、必ずしも売却価値を有する財産だけではありません。
過去の支出額(原価)の当期の損益にかかわらない部分(支出未費用)も含まれています。
動態論の中心的な課題は、確実な収益を計上し、確実な原価をのうち当期に帰属する部分との差し引きで損益計算を行うことにあったといってよいでしょう。

しかし、経済(特に金融)の国境が消え、その比重が高まるにつれ、資産を原価のまま放置する事に対する弊害は広がっていきました。
ラフにいってしまえば、「もの」よりも「かね」の占める比重が極端に大きくなったのです。
そんな中で登場したのが、資産負債アプローチと呼ばれる考え方です。
会計の全体像を考えるにあたって、まずは、資産と負債を定め、両者の差額を純資産とし、純資産の変動額を利益(包括利益)とする方式です。

世界的には、純資産の変動額としての包括利益を重視する方向に向かっているようです。
しかし、我国の概念フレームワークは、純利益を重視する道を選びました。
財産法的な利益である包括利益を業績指標としての利益である純利益に絞り込むために概念フレームワークがとったのが、リスクからの解放です。

リスクからの解放とは、投資目的どおりの期待していた成果が確定した段階で利益(収益)を認識する考え方を意味しています。
企業の目的は、投資家から委ねられた資金を事業に投下し、その資金を増加させることにあります。
そこにおける成果(最終的には資金の増加)を認識するタイミングは、投資目的に応じて判断すべきでしょう。
投資目的に見合う確定した成果を獲得した段階で利益を認識する考え方がリスクからの解放です。
成果の確定は、多くの場合には、キャッシュ・イン・フロー(現金収入)をもって確認できます。
このようなタイミングで利益を認識し、そこで認識された利益、すなわち純利益を業績評価の指標として重視する道を概念フレームワークは選んだのです。

概念フレームワークでは、このように二つの利益を併記しながらも純利益重視の道を選びました。
しかし、包括利益が純利益に代わりうる利益指標たることもまた否定してはいません。
そして、世界は、包括利益を選ぼうとしています。

なぜ、世界は包括利益を選ぼうとしているのでしょうか?
このまま損益計算書の最終値は、包括利益になるのでしょうか?
そうだとすれば、純利益の何が問題なのでしょうか?
包括利益に問題はないのでしょうか?
っていうかそもそも包括利益って何だ?(←また振り出しですか)

リスクからの解放とは何か(完)

包括利益と純利益(1)へ続く(←………線路じゃないんだから)
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