投資家の行う投資意思決定に対する有用性を会計情報に求め、結果としての業績(利益)報告を重視したのです。
結果としての業績(利益)報告を行うためには、投資目的に応じた利益の認識が考えられるべきでしょう。
このような視点から、投資目的に応じた成果が確定した段階で利益(収益)を認識する考え方が「リスクからの解放」です。
投資目的にてらして、期待しているとおりの確定した成果を獲得した段階で利益(収益)を認識する。
それがリスクからの解放です。
事業投資の目的は事業に資金を投じ、その資金を増やす事にあるでしょう。
事業投資の成果は、典型的には、増加した資金を手にすることにより確認できます。
それは、事業投資(たこ焼)の場合で言えば、商品を引渡した段階と同じでしょう。
金融投資(売買目的有価証券)についていえば、時価の変動そのものです。
時価の変動そのものを利益として認識すべき事になる訳です。
ここで、リスクからの解放という考え方を従来の実現概念や実現可能概念と比べて簡単に考えておきましょう。
伝統的な実現概念では、実現を第三者との客観的な取引、つまりは販売(引渡)におきました。
これに対して実現可能概念では、引渡を引渡(売却)可能という状態まで拡張しています。
リスクからの解放は、視点がやや異なりますが、投資目的に対する確定した成果が獲得された段階を考えています。
実現 < リスクからの解放 < 実現可能
このような考え方の違いは、事業投資の面では大きくあらわれません。
商品を引渡せば、それは客観的で確実で、もちろん成果は確定しています。
いずれの考え方をとっても収益(利益)は、認識されます。
大きな違いをもたらすのは金融投資です。
売買目的有価証券についていえば、従来の実現概念では、損益は認識されません。
第三者との具体的な取引(売却)がないからです。
リスクからの解放や実現可能概念をとった場合には、いずれも利益(損益)は認識されます。
このような収益(利益)の認識の考え方とそのもとでの利益概念は、次のように整理する事ができるでしょう。
実現……………………昔の純利益
リスクからの解放……今の純利益
実現可能………………包括利益
このように考えるとリスクからの解放の意味が随分とはっきりとして、きませんか?(←疑問形ですな)
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