2007年01月03日

利益とは何か(4)

簿記を学習した当初に仕訳がゴチャゴチャになった記憶があります。
借方と貸方って、どっちがどっち?
金を貸して、何で借方に貸付金?
資産と収益って、どっちも有利っぽいけどなんで増減の関係が逆?

今では、五区分の増減を間違えることはあまりありません(←ちょっとはあるのね)。
しかし、学習をはじめた当初は、ゴチャゴチャでした。
そのゴチャゴチャも時間とともに解消していきました。
仕訳を数多くこなすことで自然と解消していった面もあるでしょう。
五区分の増減のルールーが頭に入ってきたということもあるのかもしれません。
しかし、私自身が最もゴチャゴチャの解消に貢献したと思えるのは、別のルートでした。
それは、現金に注目することです。

現金は資産。
資産の増加は借方。

この二つの事実だけにとても着目しました。
たぶん講師に促されたのだとは思いますが、残念ながらきっかけについてのはっきりした記憶はありません。
現金という一つの資産に着目するだけで、相手科目がわかれば、多くの仕訳をきることができます。
それは、現金がなじみもあり、とてもわかりやすく、明確だったからなのでしょう。
具体的で明確なものを元に仕訳の仕組みを考えたので記憶にも定着しやすかったのだと思います。

そのうち、対象は具体的な現金以外の資産(預金や備品等)に広がりました。
そしてその延長に貸付金や売掛金といった他の資産を考えました。
さらにその反対として借入金や買掛金といった負債を想定することで、きれる仕訳も増えていったように思います。
資産と負債が反対の性格を持っていて、その増減の記録も逆になるということが明確に意識できてからは、仕訳の貸借を間違えることは極端に減ったと思います。
五区分で最後に残ったのは、やはり費用や収益ではなかったかと思います(資本もですが)。

自らの実体験のみに照らして五区分のわかりやすさを判断する訳にはいかないかもしれません。
しかし、資産や負債、そしてその差額としての純資産(当時は資本)よりも費用や収益の方が捉えどころのない概念であることは間違いないのではないでしょうか。

純利益は、収益と費用の差額として算定されますが、収益や費用を直接的に定義することはどうも難しそうです。
その事は、収益や費用がわかりにくいことと同様かもしれません。
どうやら、「資産と負債の差額」として純資産を定義する方が近道のようです。

利益とは何か(5)へ
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2007年01月13日

利益とは何か(5)

純利益は、損益法と財産法という二つの方法によって計算することができます。
損益法や財産法の計算要素である収益、費用、純資産をきちんと決めることができれば、純利益の意味もみえてくるでしょう。
収益と費用は、これを積極的に定義しようとすると曖昧になりがちで、純資産の方がすっきりといきそうです。

純資産は、資産と負債の差額です。
資産と負債がきちんと定義できれば、その差額としての純資産の意味も明確になります。
資産概念と負債概念は対照的ですので、資産概念をきちんと定義できれば、純資産の意味も明確になります。

かなりラフには、概念フレームワークは、このような選択をしました(おおっ、概念フレームワークが登場ですな。ちなみにすでに(5)ですが)。
つまり、曖昧になりがちな収益や費用を直接的に定義する事は避け、「純資産の変動額」として利益を捉えたのです。
純資産は、「資産と負債の差額」ですので、概念フレームワークで独立した定義が与えられているのは、この資産と負債だけになります。
負債は、資産と対照的ですから概念フレームワークの諸概念の理解には、資産の定義が大きな意味を持ちそうです。

それでは、概念フレームワークでは、資産をどのように捉えているのでしょうか。
ここでは、それ以前の資産概念との比較で簡単にみておきましょう。

概念フレームワークで資産は、「経済的資源」と定義されています(もっと長いですが)。
経済的資源というと石油とか、石炭を思い浮かべてしまいそうですが、概念フレームワークの資産概念はちと違うようです。
経済的資源は、「将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉」とされています(ちと、厳しいですな)。

概念フレームワークでは、誤解をおそれずにいえば、「現金収入の獲得に役立つもの」を資産と考えたのです。
決算日に売却したと考えた場合の収入をもたらすものだけではありません。
「将来の」現金収入に役立つものも資産と考えたのです。

現金やこれに準ずるもの、直ちに現金収入をもたらすものはもちろん資産でしょう。
「将来の」現金収入に貢献するものも資産です。
えーっと、この事が何を意味するのかは、直ちにはわかりませんが(←わからないのね)、概念フレームワークの資産概念の中枢に、現金(キャッシュ)があることは間違いないようです。

概念フレームワークで唯一の独立した定義を与えられている資産は、現金と関連づけされています。
それは、偶然にも簿記の学習をはじめた当初、借方と貸方がゴチャゴチャになっていた初学者の私と同じようです。
しかし、単なる偶然とは言い切れない面もあるのかもしれません。
現金というとても明確でわかりやすいものにいずれもが向かったと考えることもできるのではないでしょうか。
その意味では、概念フレームワークは私です(←そ、それは違うでしょ。たぶん)。

ただ、大きな違いがあります(←やっぱり違うのね)。
それは、私は目に見える現金、そこにある現金を想像していました。
概念フレームワークで想定されているのは、あくまでも現金の流れという点です。
「将来の現金収入」に「現時点」で貢献しているであろう資産の姿が、浮かび上がって………こないか?

利益とは何か(6)へ
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2007年01月14日

利益とは何か(6)

静態論のもとでは、資産は、売却価値を有する財産と考えられました。
売ったらなんぼ、がある物が資産だった訳です。

しかし、必ずしも全ての資産の売却価額が明確な訳ではありません。
また、そもそも企業は、所有財産のすべてを売却することを目的に活動している訳でもありません。
企業は継続的な営利目的活動を営んでいるのです。
企業の目的とするところは、利潤の追求にあります。
全ての資産を売却することを目指している訳ではありません。
企業活動を対象とする企業会計もその目的に見合った企業利益を適正に算定することに重点が置かれるべきでしょう。
このような観点からいえば損益計算がもっとも重視されるべきです。

貸借対照表は、損益計算を行った残り(未解決項目)を記載したものと考えたのが動態論です。
動態論の大きな特徴は、収支計算と損益計算の違いに注目し、その差異が貸借対照表にいくと考えた点にあります。
そこでの資産の典型は、「支出未費用」です。

(借)備   品 100 (貸)現  金100
(貸)減価償却費  20 (貸)備  品 20

支出額(100)のうち費用(減価償却費)にならなかった金額、つまり備品の未償却残額が資産と考えたのです。
このような項目が、「支出未費用」とよばれます。
このように将来的に費用になる資産(費用性資産)と現金やこれに近い資産(貨幣性資産)を資産として捉えているのが、動態論といってよいでしょう。
動態論のもとでの資産概念は、ときにサービスポテンシャルズ(用益潜在性、用益可能性)などとも呼ばれます。
将来において収益の獲得に貢献するような潜在的な用益のかたまりが、動態論のもとでの資産です(まあ、自分で言っててわからないですが)。

これに対して概念フレームワークでは、資産を「経済的資源」と定義しました。
そして、その経済的資源は、「将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉」と説明されています。
概念フレームワークでは、将来の現金収入に役立つものを資産と考えているのです。

静態論のもとでは売却したら手にするであろう現金が想定されています。
初学者だった私が仕訳を理解するの思い描いた現金は現実にある現金です。
概念フレームワークに登場する現金(キャッシュ)もこれらと本質的に異なる訳ではないでしょう。

しかし、大きな違いがあるようです。
概念フレームワークにおける現金は「将来」を想定しています。
両者(静態論や私と概念フレームワーク)の間の大きな違い、それは「現在」と「将来」の間にあるもの、すなわち「時間」といってよいかもしれません。

って、時間って何だ?

利益とは何か(7)へ
posted by 講師 at 22:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月16日

利益とは何か(7)

初学者だった私が、複式簿記の仕組みを身につけるのに大きな力となったのは、「現金」でした。
目に見える具体的な現金という資産を軸に仕訳を考えた事がよかったのかもしれません。
「現金(キャッシュ)」は、単に明確である以上に重要なのでしょう(きっと)。

静態論のもとでの資産は、「現在の」売却可能な財産でした。
動態論のもとでの資産の典型は、「過去の」支出未費用項目でした。
概念フレームワークのもとでの資産は、「将来の」現金収入に貢献するものです。

これらの考え方の違いが資産の評価額にもそのまま影響しています。

静態論のもとでの資産の評価額は、「現在の」売却価額です。
動態論のもとでの資産の評価額は、「過去の」支出額(取得原価)を基礎にしています。
新会計基準のもとでの資産の評価額は、「将来の」収入額を基礎にしたものが多いです。

静態論や動態論では、「今」や「過去」をメインに考えていました。
これに対して、概念フレームワークの資産概念では、「将来」時点が想定されている点が大きく異なっています。
「今(過去)」と「将来」の間にある時間。
その時間の差を埋めるのが割引(現在)価値の考え方です。
将来の現金収入を想定し、現在の金額を決めるのに必要なのが割引(現在)価値の考え方です。

将来(1年後)の現金収入110円
割引率10%
割引現在価値 110円÷(1+0.1)=100円

将来(1年後)の現金収入110円をもとに、現在の貸借対照表に計上する金額を算出するには、時点のベースをそろえる必要がある訳です。
そのための計算が割引計算で、割引計算の結果に算出されたのが、割引(現在)価値です。
いわゆる新会計基準で割引(現在)価値が登場する事が多いのは、このような事情からといってよいでしょう。

概念フレームワークの資産概念は、一面では、静態論のもとでの資産概念に近いといってよさそうです。
しかし、決定的に異なるのは、それが「将来の収入」に関連付けされている点です。
「将来の収入」と「今の収入」との差は、時間にあります。
その違いを埋めて、貸借対照表に時点(将来→現在)をそろえて各項目を計上するためには、ちょっとした工夫が必要です。
その必要な工夫、それが割引(現在)価値の考え方に他なりません。

概念フレームワークにおける資産概念は、動態論のもとでの資産概念よりも静態論のもとでの資産概念に近いようには思えます。
どちらにより近いのかは概念フレームワークをおつくりになられた方のコメントをお待ちしております(←だからないって)。

利益とは何か(8)へ
posted by 講師 at 21:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月19日

利益とは何か(8)

利益を純資産の変動額と捉え、純資産を資産と負債の差額とする。
資産と負債がきっちり定まれば、利益もみえてくるというのが概念フレームワークの考えでしょう。
このような定義面での構図をみると概念フレームワークは、いわば財産法的に利益を考えているといってよさそうです。

概念フレームワークで独立した(他の項目を使用しない)定義が与えられているのは、資産と負債だけです。
負債は、資産と対照的ですから、概念フレームワークで重要性を持つのは、資産でしょう。
資産は、経済的資源(将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉)とされていました。
将来の現金収入に役立つもの、それが概念フレームワークにおける資産です。
「将来の」現金収入に役立つものを「今の」時点にそろえるために必要なのが、割引(現在)価値の考え方です。

概念フレームワークでは、利益を財産法的に考え、資産(負債)をまず定義しました。
概念フレームワークで、貸借対照表項目を重視していることは間違いなさそうです。
しかし、概念フレームワークでは、貸借対照表項目を絶対視し、損益計算書項目に従属的な地位を与えているのかというとそうではありません。
いや、むしろ損益計算書における純利益を極めて重視しているのです。
ここが、概念フレームワークにおけるもっとも大きな工夫といってもよいでしょう。
しかし、とても大きな工夫だけに、それはわかりにくさも伴っているように思えます。

これまでに幾度となく登場した財産法と損益法。
純資産の変動額で利益を計算するのが財産法でした。
収益と費用の差額で利益を計算するのが損益法でした。
そして、両方式で計算された利益は一致します。

しかし、現行制度上、純資産の増が純利益となっている訳ではありません。
つまりは、両方式による利益は一致しないのです。
現行制度上、損益計算書の最終値は、当期純利益です。
この当期純利益は、当期中の純資産の増ではありません(資本取引は除外します)。
なぜなら純資産が増えても、純利益が増えない場合があるからです。
その典型が、その他有価証券の評価差額(科目は、その他有価証券評価差額金)です。

(借)投資有価証券××× (貸)その他有価証券評価差額金×××

この仕訳で、純資産が増えていることは間違いありません。
そして、これは、株主との直接的な取引(資本取引)でもありません。
つまり、資本取引以外の純資産の増であっても、必ずしも純利益に影響しない場合があるのです。

上記のようなその他有価証券の処理方法は、純資産直入法と呼ばれます。
通常の評価益等であれば、損益勘定を経由して(損益計算書に計上されて)、資本項目(繰越利益剰余金)が増えます。

現行制度上は、純資産が増えているのに直接的に純資産の部に計上する処理を行う場合があります。
このような処理が行われる限り、純資産の増は、純利益とは一致しません。

概念フレームワークでの「純利益」は、純資産の変動額ではありません。
純利益は、純資産の変動額からこの評価差額等を控除した金額になります。

純資産の変動額−評価差額等=純利益

概念フレームワークにおける純資産の増(変動額)は、「包括利益」と呼ばれます。

概念フレームワークには、二つの利益、すなわち「包括利益」と「純利益」とが並存しています。
いわば、財産法的な利益である包括利益と損益法的な利益である純利益。
この二つの利益が独立して存在するところに概念フレームワークの大きな特徴があるといってよいでしょう。

利益とは何か(9)へ
posted by 講師 at 21:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月20日

利益とは何か(9)

財産法的にいえば、利益は、純資産の変動額と定義できます。
しかし、概念フレームワークにいう純資産の変動額は、純利益ではありませんでした。
その他有価証券の評価差額等については、純資産が増えても純利益が増えません。
概念フレームワークにおける財産法的な利益は、「包括利益」と呼ばれています。

包括利益は、我国ではその開示を要求されていません。
「仮に」表示するとすれば、損益計算書の最終値である当期純利益に評価差額等を加算して、包括利益を算出することになります。
もしこうすれば、損益計算書で算出される利益と純資産の変動額は、包括利益として一致します。
少なくとも形式的にはこの方がわかりやすいでしょう(包括利益がわかりにくいという話はありますが)。

概念フレームワークでは、定義のしやすい資産、負債をまずは定め、その差額を純資産とし、純資産の変動額を利益ととらえ、ここから評価差額等を除く形で純利益の概念を導いています。
今、概念フレームワークにおける財務諸表の構成要素の定義を極めて簡略化して示しましょう(厳密なものではありません)。

資産………経済的資源(将来のキャッシュの獲得に貢献する便益の源泉)
負債………資産を引渡す義務
純資産……資産と負債の差額
包括利益…純資産の変動額
純利益……包括利益−評価差額等
収益………純利益の増加項目
費用………純利益の減少項目

財務諸表の構成要素に示される項目のうち他の項目を用いずに独立した定義を与えられているのは、資産(と負債)だけです。
この資産と負債の差額を純資産とし、純資産の変動額を包括利益とする。
包括利益から評価差額等を控除したものを純利益とし、その純利益と関連付けて収益と費用を定義しています。

概念フレームワークの財務諸表の構成要素の相互関係を定義の仕方も踏まえて式に表すと次のような感じでしょうか。

資産−負債=純資産
期末純資産−期首純資産=包括利益
包括利益−評価差額等=純利益
純利益=収益−費用

定義面から見る限り、微妙なのは、やはり純利益です。
資産(負債)の定義がしっかりしている限り、微妙なのは、純利益です。
マイナス評価差額等って、あなた(←って、アナタが書いてるんでしょ)。

定義面からみる限り微妙に思える純利益。
この純利益を概念フレームワークは極めて重視しています。

なぜ、概念フレームワークでは、貸借対照項目を重視しつつ、包括利益ではなく、純利益を重視しているのでしょうか。
包括利益と純利益とでは一体何がどのように違うのでしょうか。
包括利益から純利益を区別するために概念フレームワークはどのような考え方をとっているのでしょうか。

謎は膨らむばかりです。はい。

概念フレームワークで包括利益を純利益に絞り込むためにとった考え方、それが「リクスからの解放」です。

って、「リスクからの解放」って何だ。

利益とは何か(10)へ
posted by 講師 at 22:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月23日

利益とは何か(完)

簿記を学習しはじめた当初、利益計算の方式には、財産法と損益法があり、両者の利益は一致すると習いました。

財産法:期末純資産−期首純資産=純利益
損益法:収益−費用=純利益

しかし、現状の損益計算書の最終値である当期純利益は、当期の純資産の増ではありません。
純資産の変動額は、包括利益と呼ばれます。

概念フレームワークでは、曖昧になりがちな収益と費用を直接的に定義することをせず、具体的な資産と負債をまず定義しました。
資産と負債の定義を定め、その差額を純資産とし、純資産の変動額を包括利益とする。
同様に純資産の変動額から純利益の概念を導き、純利益の増減に関連させて収益と費用を定義しています。

概念フレームワークの利益概念は、定義面から見るかぎり、いわば財産法的です。
しかし、損益計算書の最終値は当期純利益です。
このことからもわかるように、概念フレームワークで重視しているのは、包括利益ではなく、むしろ純利益といえるでしょう。
定義面を考えると、ストックを重視しているように見えます。
その延長で考えれば、ストックから導かれる包括利益に重点が置かれてもよさそうです。
しかし、概念フレームワークでは、包括利益よりも純利益というフローを重視しているのです。

貸借対照表項目を絶対視するなら純資産の変動額(包括利益)を唯一の利益とするのも一つの考えでしょう。
事実、そのような考え方もあります。
その方が、少なくとも形式上は、損益計算書上の利益と純資産の変動額が一致してわかりやすいでしょう。
しかし、概念フレームワークでは、定義面では、包括利益と純利益を独立させ、包括利益よりも純利益を重視しました。
この点が概念フレームワークにおける大きな工夫といってよいでしょう。

貸借対照表項目に時価や現在価値を求める動きは止まりそうにありません。
時代は、明らかに損益計算書項目重視から貸借対照表項目重視へと移っています。

概念フレームワークにあげられている二つの利益。
概念フレームワークでは、明らかに包括利益ではなく、純利益を重視しています。

概念フレームワークで、貸借対照項目を重視しつつ、包括利益ではなく、純利益を重視しているのはなぜでしょうか?
包括利益と純利益とでは何がどのように違うのでしょうか?
包括利益から純利益を区別するために概念フレームワークはどのような考え方をとっているのでしょうか?

概念フレームワークで包括利益を純利益に絞り込むためにとった考え方「リクスからの解放」とは一体何でしょうか?

謎を深めつつ、利益とは何か(完)

リスクからの解放とは何か(1)へ続く(←続きましたか)
posted by 講師 at 21:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

リスクからの解放とは何か(1)

概念フレームワークでは、資産と負債をキャッシュ(現金・資金)に関連付けて定義し、資産と負債の差額を純資産としました。
純資産の変動額は「包括利益」と呼ばれます。
概念フレームワークにおける財産法的な利益、それが包括利益です。

このように資産と負債の概念を最初に定める方式は、我国の概念フレームワーク特有のものではありません。
海外の先行する概念フレームワーク等も同様の方式をとっています。
海外の先行する概念フレームワーク等を我国の概念フレームワークが参考にしたという方が適切でしょうか。

このように資産・負債の概念を最初に定める方式は、「資産負債アプローチ」や「資産負債中心観」と呼ばれます。
まずはじめに資産と負債をきっちりと固めるところからこのような呼称がついたのでしょう。
従来よく使われている「主義」や「論」という言葉には、何かそれを貫く筋のようなものが感じられます。
これに対して、「アプローチ」や「観」という言葉は、それによっていることは間違いないのでしょうが、やや距離を置いた印象があります。
新しく登場したこの「資産負債アプローチ」の性格を物語っている部分があるのかもしれません。

資産負債アプローチに対し、従来的な方式(動態論といってもよいでしょう)は「収益費用アプローチ」や「収益費用中心観」と呼ばれます。
これまで我国の制度会計で指導的な役割を果たしてきた企業会計原則は、この収益費用アプローチによっています。
いわゆる新会計基準の多くに資産負債アプローチの考え方が反映されています。
世界の流れをみても時代は、明らかに収益費用アプローチから資産負債アプローチへと移行しつつあります。
少なくともこの流れに抗うことはできないでしょう。
この事は、「事実として」極めて重要です。
先行する海外の動向は、どうやら純資産の変動額としての「包括利益」重視に動きそうな雲行きです(たぶん)。

しかし、我国の概念フレームワークは、これとは異なる道を選びました。
それが、「純利益」重視の道です。

概念フレームワークでは、純資産の変動額を包括利益としました。
そして同じく純資産の変動額から別個の概念である純利益を導き、純利益に関連付けて収益と費用を定義しています。
しかし、同様に純資産の変動額から利益概念を導いているにもかかわらず、概念フレームワークでは、包括利益よりも純利益を重視しています。
海外の概念フレームワークとは異なり、純利益を重視する以上、その理由はあるでしょう。
概念フレームワークの理解には、包括利益と純利益を区別する考え方を知る事が不可欠です。
包括利益から純利益を抜き出す考え方、それが「リスクからの解放」です。

ここでは、このおそらくはなじみのないであろうリスクからの解放について考えてみたいと思います。
またもや長丁場になると思いますが、お付き合いの程、よろしくお願い申し上げます。

リスクからの解放とは何か(2)へ ←へっ。挨拶だけですか。

2007年01月27日

リスクからの解放とは何か(2)

前編、「利益とは何か」では、すでに知識としてあるであろう財産法と損益法という利益計算の方式を題材にしました。
そこから、概念フレームワークにおける財務諸表の構成要素を資産概念を中心に概観しました。

そこで浮かび上がってきた課題、「リスクからの解放」がここでのテーマです。
概念フレームワークで、いわば包括利益を純利益に絞り込むためにとった考え方、それが「リスクからの解放」です。

概念フレームワークで、リスクからの開放とは、「投資にあたって期待された成果が事実として確定すること」をいいます(不可逆という表現が変更されました)。
従来の実現概念と区別する意味で「確定」という表現をとったといったところでしょうか。

従来の実現概念やその延長にある実現可能概念とは何が、どう違うのでしょうか。
それとも本質的に違うのでしょうか。
よくわかっていない事をもとに話を進めても意味がありませんので、もう少し前の段階から考えてみたいと思います。

リスクからの解放にいう投資は、企業の行う投資を指しています。
リスクからの解放は、「投資リスクからの解放」です。
キーワードはどうも「投資(目的)」にありそうです。
株式や社債を売ったり買ったりする「投資」です。
現実の株や社債の購入経験のある方とない方とでは距離感も異なると思います。
投資に対してもしかするとある種の嫌悪感を持っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、投資に目を向けることは、この「リスクからの解放」を理解するためには不可欠です。

投資家の行う投資と企業の行う投資。
まずは、簡単な投資家と企業の関係、そして、それぞれの狙いを確認しておきたいと思います。

投資家は株式や債券(社債等)を購入することで企業に資金(キャッシュ)を投下します。
その狙いは、実際には様々かもしれませんが、一言でいえばより多くの資金を手にする事でしょう。
これは私のような著名な投資家はもちろん(←著名なのね)、投資家一般についていえるでしょう。
投資家は、自己の資金を投下し、より多くの資金を手にすることを望んでいる訳です。

企業は、投資家から集めた資金をもとに事業活動を行い、より多くの資金を手にすることをもくろんでいます。
当初の集められた資金よりも多く獲得した資金、ざっくりといってしまえば、これが利益です。
投下資金を超える回収資金、つまりは、回収余剰(投下して回収した残り)としての資金が利益です。

まずは、投資家と企業の目的がそれぞれの投下資金(キャッシュ)を増やす事にあることを確認しておきましょう。

リスクからの解放とは何か(3)へ