2006年12月23日

利益とは何か(1)

「企業会計の目的は適正な期間損益計算にある。」

会計学を学習しはじめた当初、幾度となく聞かされました。
期間損益計算が重要だろうことは、初学者だった私にもわかりました。
収益から費用を引くと利益がでる。
これが大事なんだ。
その事はわかりました。
しかし、反面、なんとなくぼやーっとしていた事も覚えています。
とても曖昧に感じていたのもまた事実だったのでしょう。

少なくとも私には、とても曖昧に感じられた「利益」。
ここでは、期間損益計算の結果算出される利益概念(純利益といった方が正確でしょうか)について考えてみたいと思います。
とはいっても正面から利益概念をとりあげる訳ではありません(というか出来ませんが)。
利益の計算方法を考えるといった方が適切でしょうか。
いや、利益計算という視点から概念フレームワークの基礎的な概念(財務諸表の構成要素)を眺めるといった方が適切かもしれません。
例のごとく、長丁場で結論は出ないかもしれません。
いや、結論はきっと出ません。
それでもお付き合いいただける方(というかできれば皆さん←なら言うなみたいな)のお付き合いの程、よろしくお願い申し上げます。

まずは、極めてなじみのある取引をもとにちょっと考えてみましょう。

(例)100円の商品を仕入れ、これを150円で販売した。

この場合の利益(もうけ)は、150円−100円=50円と算出されます。

今、単純な個人企業を想定して、一連の会計処理を考えてみましょう。

出資:(借)現金預金100 (貸)資本金100

仕入:(借)仕入100 (貸)現金預金100

売上:(借)現金預金150 (貸)売上150

決算整理(この場合はありません)を経て、損益計算書には、収益(売上=150)と費用(仕入→売上原価=100)が記載されます。
当期純利益は、収益と費用の差額の50円です。

このように収益と費用の差額として純利益を算出する方法は、損益法と呼ばれています。

上記事例で、純利益は、最後(期末)の純資産(純財産)−最初の純資産(純財産)としても算出することが可能です。

最後の現金預金150−最初の現金預金=50

このような純利益の算出方法は、財産法と呼ばれています。
損益法による純利益と財産法による純利益は、一致します。
ええ、一致します(たぶん←いや、そうでしょ←そうか?)。

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posted by 講師 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月25日

利益とは何か(2)

損益法:収益−費用=純利益
財産法:期末純資産−期首純資産=純利益

損益法によれば、純利益は収益と費用の差額として算出されます。
財産法によれば、純利益は、期末純資産と期首純資産の差額(純資産の変動額)として算出されます。
損益法と財産法による利益計算の結果は一致します。

結局のところ純利益は、純資産が一定期間にどれだけ増えたのかを意味していることがわかります。
利益を入ってきた財産(収益)から出て行った財産(費用)の差額として計算するのが、損益法です。
利益を時点間の純資産の差額として計算するのが財産法です。
「純資産の変動額」をフロー(出入)の差として計算するか、ストック(在高)の差として計算するかが両者の違いです。
両者が一致するのはいわば当然ともいえるでしょう。

このことは純資産を例えば「水」に置き換えても同じです。
今、水槽に1リットルの水があるとします。
この水槽に4リットルの水をバケツで加え、3リットルの水をバケツで外に出します。
水槽には2リットルの水が残ります。

財産法:最後にある水(2リットル)−最初にあった水(1リットル)=1リットル
損益法:入れた水(4リットル)−出した水(3リットル)=1リットル

損益法と財産法は、純資産の増量計算に過ぎません。
純資産を水に置き換えても全く同じことが言えます。
もちろん、水を例えば、お金に置き換えても同じですし、パチンコの玉(←かえってわかりにくいって)でも同じです。

企業会計上、水やお金に相当する「純資産」が極めて明確であれば、純利益もそれほど難しくはないでしょう。
また、収益や費用が明確であれば、純利益は両者の差引計算ですので、単純です。

では、これらの概念、すなわち純資産、費用や収益がそれほど明確なのかです。
純資産、収益や費用は、水やお金やパチンコ玉のように、誰にでもわかる程に明確なものなのでしょうか?
また、これらを定義することは容易なのでしょうか?

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posted by 講師 at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月26日

利益とは何か(3)

損益法によれば、純利益は収益と費用の差額として算定されます。
財産法によれば、純利益は、期末純資産と期首純資産の差額、つまり、「純資産の変動額」として算定されます。
そして両方法による純利益は一致します。
両方式の計算要素である収益や費用、純資産が明確であれば、何も問題はありません。
しかし、それぞれの概念(収益、費用、純資産)は、それほど明確なのでしょうか?

もちろん、収益、費用、純資産は、簿記会計で一般的に使用されている用語です。
皆目検討がつかないということはないでしょう。
しかし、例えば、「収益とは何か?」という問いに置き換えて考えてみてください。
案外とやっかいな問題であることに気づくのではないでしょうか。

損益法では、純利益は収益と費用の差額として算定されます。
純利益を仮に、「収益と費用の差額」と定義するなら、収益や費用がきちんと定まっていないと意味がありません。

それでは、収益とは一体何なのでしょうか?
費用とは一体何なのでしょうか?

極めて抽象的には、収益は「成果」であるとはいえそうです。
100円の商品を仕入れて、その商品が150円で売れれば、150円の成果があがったとはいえるでしょう。
150円の売上という成果を獲得するためには、100円の売上原価という犠牲は不可欠です。
このように考えると費用は「犠牲」だといってよいかもしれません。

売上という価値の獲得=成果が収益で、売上原価という価値の消費(喪失)=犠牲が費用ととりあえずはいえそうです。
しかし、どうも判然としないとの印象を抱くのは私だけでしょうか。
もう少しいえば、すっきりしないのです。
経験的には、すっきりとしているかいないかということは案外と大事なように思います。
誰もが言っている事であったとしても、それが正しい事であったとしても、自分ですっきりしていないことを元にして、その先を語ることはできません。

おぼろげながらも成果や犠牲という語を使えば、収益や費用の性格を何らかの形であらわしていることにはなりそうです。
しかし、もっと明確な考え方をとることはできないのでしょうか?
すっきりすることはできないのでしょうか?

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posted by 講師 at 23:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 利益とは何か | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする