いや、それはとてつもなく難しいことといった方がよいのかもしれません。
ややラフには、資産概念は、次のように推移してきたといってよいでしょう。
(1)売却価値のある財産(静態論)
(2)貨幣性資産と費用性資産(動態論)
(3)経済的資源等(新静態論)
現在は、このうち(2)から(3)への過渡期にあるといったあたりかもしれません。
ここでは、このうち動態論のもとにおける「資産とは何か」について考えてみたいと思います。
簿記の「借方・貸方」という表現からも想像できますが、複式簿記は、当初、債権債務(金銭の貸し借り)を記帳する技術として誕生し、発展してきました。
誰にいくらの債権(売掛金や貸付金等)があり、また、債務(買掛金や借入金等)があるかは、複式簿記の誕生以来、企業をとりまく利害関係者の大きな関心事であり続けています。
このことは、今日においても、変っていません。
企業に対して債権(例えば、貸付金)を有している者は、その貸付金が返ってくるのかに関心があります。
企業が有する資産をすべて売却し、換金した場合に、これが債務の金額よりも多いのであれば、債務の返済に支障をきたすことは少ないでしょう。
債権者も最悪、全部売り払って、かね返せといえる訳です。
このように企業をとりまく利害関係者のうちでも債権者の占める比重が高く、債務の返済に関心がよせられていた時代の貸借対照表は、売却価値を有する財産の一覧表に近い意味をもっていたようです。
そこで付される財産の価額は、文字どおり売ったらいくらという意味での時価であったといってよいでしょう。
ここでの資産は、紛れもなく「売る価値のある物」という事になります。
このような時代における貸借対照表の見方、そして、そこにおける会計の見方こそが、まさに静態論であるといってよいでしょう。
静態論における「資産とは何か」
それはまさに「売却価値を有する財産」です。
静態論における資産概念は、考え方としては、極めてシンプルです。
しかし、会計に対する見方は、静態論のままとどまっていた訳ではありません。
動態論へと進化していきました。
動態論のもとでの資産概念、これが新基準以前の一般的な資産概念であるといってよいでしょう。
動態論の資産概念(2)へ